姉介護の負担「全くありません」 それでも事件は起きた

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堀越理菜
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 七尾市の自宅で姉を殺害しようとしたとして殺人未遂罪に問われた無職江尻康被告(70)に対する裁判員裁判の判決が19日、金沢地裁であり、懲役2年6カ月保護観察付き執行猶予4年(求刑懲役3年)が言い渡された。姉の介護で将来を悲観し、犯行に及んだ被告について大村陽一裁判長は、独りよがりで短絡的としつつ、「かけがえのない姉との生活が閉ざされることを憂慮し、苦悩して犯行に至った経緯は同情すべきだ」などと述べた。

 判決によると、被告は無理心中しようと考え、昨年7月15日明け方、姉詩子さん(当時76)の首を殺意を持ってカッターナイフで切りつけたが、救命できると思い直して犯行をやめ、加療約16日間のけがを負わせるにとどまった。

 一連の裁判では、被告が介護や経済的な悩みについて「(相談することに)慣れていなかった」などの理由で周囲に相談できないまま、犯行に至った状況が示された。一方、地元では寛大な処分を求める嘆願書が七尾署に提出され、約450人が署名したことも明らかになった。

 裁判員の60代女性は判決後の会見で「(被告は)真面目な人すぎて迷惑をかけてはいけない思いが強すぎたのかなと思った。これからは周りに応援してくれている人がいることを心に留めてほしい」と話した。

「誰にも負けない幸せをあげたい」

  一連の裁判では、2人で支え合い生きてきた姉弟の姿が浮かび上がった。

 被告は七尾市で3人きょうだいの末っ子として生まれた。1人は幼い頃に亡くなり、6歳上の姉詩子さんが遊び相手だった。薬局を営んでいた父も被告が幼い頃に亡くなった。23歳の頃には母も亡くなり、被告が店を継いだ。以来、50年近く、2人は結婚せず、二人三脚で生きてきた。

 薬局は郊外に大型店舗ができて経営が悪化し、被告が50歳の頃にたたんだが、その後は姉と指圧マッサージを勉強し、金沢市内に店を出した。だがそれも60歳ごろに辞め、その後は預貯金などで生活した。

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