「セクハラ」「報酬未払い」…被害訴えるフリーランス

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吉田貴司
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 フリーランスとして働く人から、契約相手となる企業側からのハラスメント被害などを訴える声が上がっています。ただ、仕事をつなぎ留めたいフリーならではの立場の弱さが、訴訟などのハードルを高くしているとの指摘も。被害を未然に防ぐための法整備が届いていない面もあるようです。

 今年夏、20代のフリーライターの女性が、依頼されて体験記事を書くなどした東京・銀座の美容エステティックサロンと経営者を提訴した。請求内容は、経営者から受けたセクハラの慰謝料や、未払い報酬の支払いなど。9月に開いた記者会見で、女性は声を少し震わせながら語った。

 「消したい記憶を呼び起こさないとならなくて、とても苦しい作業でした。それでも裁判すること、記者会見をさせて頂くことに決めたのは、新たなセクハラやパワハラ、報酬未払いの被害者を、1人でも減らすことができればという思いがあるからです」

 語るにつれてぎゅっと握りしめられた左手は、退席するまで解けなかった。後日、握りしめた理由を尋ねると、女性は「思い出すつらさや、どうにか伝えなきゃという思いがあったから」と話した。

記事の執筆依頼をめぐり……

 訴状や会見などによると、昨年3月に女性の個人ウェブサイトを通じて、エステサロンの体験記事の執筆依頼があった。引き受けて記事を書いたところ、経営者は高く評価。「会社を辞めて、うち専属でフリーでやりなよ」などと声をかけられた。

 その後、無料体験の施術と称して下半身を触られたり、性行為を強要されたりするなどの性被害があったという。女性は当時、アルバイトなどを掛け持ちしながらフリーランスとしての独立を目指していた。専属契約の交渉が進んでいたこともあり、これらの行為を我慢していたという。

 昨年7月、コラムの執筆やエステサロンのSNS発信などの業務委託契約を結んだ。ただし、女性の弁護士によると書面で契約を交わしておらず、LINEやメールのやりとりでの契約だったという。契約を受けてほぼ毎日コラムを配信したが、経営者は「こんな質の低い記事に報酬は払えない」と繰り返し、結局1円も支払われなかった。

 その後も状況は変わらず、同年10月に契約を終了。この頃には、震えや頭痛などの体の不調が出ており、後日「うつ状態」と診断された。女性は今年7月、セクハラやパワハラの慰謝料約550万円などを求めて東京地裁に提訴した。

経営者側は否定、争う姿勢

 10月28日の第2回口頭弁論で、経営者側は、ほぼ全面的に争う姿勢を明らかにした。書面の主張では、女性側が主張する性行為の強要は「事実はなく、強く否認する」。そのほかのセクハラやパワハラについても「事実は存在しない」とした。女性との契約は成立しておらず、仮に成立していたとしても、求めた業務は「毎日上質な記事を最低一つアップ(ロード)すること」で、女性の記事は不十分だったなどとしている。

 女性と会社側の関係については、「小規模会社であって、ライター個人に対して優位な力を持ち合わせてはいない」などとした。朝日新聞の取材申し込みに、会社側の弁護士は「会社側は取材には応じられない」としている。

 今月6日、女性の支援者たち…

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