川辺川ダムめぐり賛否分かれる 人吉では慎重意見も

竹野内崇宏
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 蒲島郁夫知事は2日、球磨川の治水対策や復興プランについて、五木村に続いて、錦町や人吉市で意見を聴いた。川辺川ダムをめぐって賛否両方の意見が相次ぎ、2008年の知事の「白紙撤回」の判断について疑問視する意見も出た。

 錦町役場では、隣接のあさぎり町民とあわせて31人が意見を述べ、川辺川ダムを求める声が目立った。

 川辺川と球磨川合流点に近い錦町・浜川地区の農業、西嶋健一さんは、農機具や自家用車の浸水被害が出たのは、川の合流で流れがせき止められるバックウォーター現象が原因だと指摘。「球磨川沿いの優良な農地を子や孫の世代につなげるためにも、被災者としてダムの重要性と必要性を感じている」と話した。

 あさぎり町区長会の松下英人副会長は、豪雨災害以前は川辺川ダムに反対だったと明かした上で、「被害を受けて今はダムが不可欠だと思っている。下流の人たちを安心させていただきたい」と訴えた。

 県球磨総合庁舎(人吉市)では、人吉球磨地域の医療・福祉・教育関係者15人が意見を述べた。

 人吉市医師会の岐部明廣会長は会員78人へのアンケート結果を提出。川辺川ダムについては回答のあった50人中、反対32人、賛成8人、どちらでもない10人で、県や国の説明が不十分との答えが37人にのぼったことも紹介し、時間をかけた議論を求めた。

 一方、球磨郡歯科医師会の向江富士夫会長は個人の意見として、「このような事態になったのは、治水整備が有効にできていなかったということ」と指摘。「もっとも短期間で有効なのはダム。川が死なないためには、人が死んでも良いのか」と訴えた。

 この日の参加者からは「知事があの時にダムを建設していたら、このような大災害にならなかったのでは」と蒲島知事の判断への疑問も呈された。

 会合後の報道陣の取材に蒲島知事は、県民から責任論を直接問われたのは初めてと明かし、「白紙撤回をした本人として重く受け止めている。だから、(近く示す)決断はより重要であると考えている」と話した。(竹野内崇宏)

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