国や熊本県の豪雨検証「不十分」 被災者が知事に訴え
7月の豪雨で氾濫(はんらん)した球磨川流域の治水対策をめぐり、蒲島郁夫・熊本県知事は22日、被害が大きかった同県の八代市坂本町と球磨村の被災者らの意見を聴いた。3会場で計56人と面会。国や県の豪雨被害の検証が球磨川本川など一部にとどまり不十分だとの指摘が相次ぎ、蒲島知事はほかの支流についても検証する方針を示した。
八代市坂本町での面会はこの日午前にあり、地域づくりに取り組む住民自治協議会のメンバーや市政協力員らが意見を述べた。
蒲島知事は12年前に自ら「白紙撤回」を表明した川辺川ダム計画について、豪雨災害を受けて「選択肢の一つ」と軌道修正する発言をしている。参加者からはこの計画を積極的に推す声は出なかった。坂本地域で2年前に荒瀬ダムの撤去を実現した住民運動を率いた本田進さんは、「ダムによって村がつぶされてきた」と訴えて「絶対反対」を表明。知事が打ち出した「ダムによらない治水」の継続を求める声も出た。
賛否は言わず「水害は逃げるしかない。安全な避難場所をつくって」「自然を大切にしながらやることが大事」との意見もあった。
ダムに反対はしないが、「河道掘削などと合わせた総合的対策を求める」「どうしても必要なら(穴あきダムのような)治水のみを目的とする」などと条件をつける人もいた。
自身も被災した市議会議員は「私はダム不要論者ではない」とした上で、「住民たちから『ダムがあったらもっとひどいことになっていた、と伝えてほしい』と言われた」と話した。
球磨村ではこの日午後に村役場と神瀬地区の集会施設の2会場で開催。各地区の区長や住民、村議らが1人ずつ思いを話した。
神瀬地区内で区長を務める瓜生文代さんは「みな神瀬に帰ってきたいので心配せず住める村づくりを」と主張。「方法がどれがいいかは分からないが、確実に治水できる対策の方向性を早く示してほしい。1~2年なら待てるが、それ以上は帰りたい気持ちもなえてしまう」と述べた。
同じく区長を務める男性は「ダムの必要性は理解できるが、全ての被害は防げない。やれることは全てやっていただきたい。温暖化による降雨量の変化も反映した治水を」と訴えた。
この日の各会場では、国や県の豪雨の検証が球磨川本川や川辺川にとどまり、県が管理する他の支流部分での被害の分析が不十分との指摘が相次いだ。
球磨村の斎藤寛さんは「支流ごとに被害も原因も違う。山の荒廃や流木被害にも触れられていない。拙速な検証では良い復興計画はできない」と意見。「ダムは必要かもしれないが、説明がほしい。(国や首長ら)上のほうだけでスピード感を持ってやっていると感じる」と指摘した。
3カ所での意見交換後、蒲島知事は「住民の方から支流の話がとても出てくることは予想していなかった。支流と豪雨被害について研究しなければ」と検証する姿勢を示した…
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