「終わりなき戦争を終わらせる」というトランプ米政権だが、新たに多用し始めた戦い方がある。制裁を駆使した「経済戦争」だ。自国の兵士を危険にさらすことなく、標的にした国の経済を破壊し、市民生活を疲弊させる。
イランの首都テヘランにある総合病院。朝日新聞助手の取材に応じた男性医師が、医薬品の在庫が底をつきそうな戸棚を見やり、ため息をついた。
「失われる必要のない命が政治的な理由で次々に消える。まさに悲劇だ」。がんや白血病、筋疾患、皮膚や血液系の難病の治療薬、透析や栄養輸液で使う器具も足りない。
2018年5月にイラン核合意から離脱したトランプ米政権は、イランに対する経済制裁を復活させた。イラン産原油の全面禁輸など厳しい内容だが、医薬品や食料品といった人道物資は適用外だ。
だが、医師は「実際には簡単に入手できなくなった。あったとしても品不足から天文学的な値段で、一般的な所得の患者は治療をあきらめざるを得ない」と憤る。
医薬品はイランでは9割以上が国内で製造されているが、原材料の4割を輸入に頼っている。抗がん剤などの高度な医療に使う薬や機器は欧米からの輸入が多い。イラン保健省の高官は「米国の制裁が問題の根源だ。イランと取引する企業は消えた」と非難する。
二次制裁、企業に踏み絵
米国がイランにかけたのは、制裁の効果が第三国に及ぶ「二次制裁」だ。通常の制裁では、イランと取引をした米国の個人や団体が、米国内の資産を凍結される。
一方、二次制裁は、日本など…
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