コロナ対策、官邸の仕事とは 医師の自民議員からの直言

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聞き手・稲垣直人
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 新型コロナ対応では、政治と専門家の役割分担があいまいと言われた。学校の一斉休校も、「Go To トラベル」開始も政府が主導。かと思えば、6月まで政府に助言してきた専門家会議は「前のめりだった」と自己総括している。両者の役割分担、責任の線引きはどうあるべきか、医師でもある鴨下一郎元環境相に聞いた。

 1949年生まれ。第1次安倍、福田内閣で環境相、小泉、福田内閣で厚労副大臣を歴任。現在、自民党社会保障制度調査会会長。衆院議員当選9回。

 ――安倍晋三首相が辞任表明しました。これまでの政府の新型コロナウイルス対応、政府と科学者の関係をどう見ていますか。

 「総理は辞任表明会見の冒頭、来たる秋冬に備えた医療体制を整えるため、紆余(うよ)曲折を経たとはいえ、適切な方向性を示されました。専門家会議が政府に提言していた当初は、医療や公衆衛生学の専門家らで構成され、経済学者などはいなかった。ですから経済対策も、西村康稔・新型コロナ対策担当相や安倍総理らが一義的に決めざるを得ませんでした。しかし、現在の分科会には、医学や公衆衛生の専門家だけでなく、経済学者や自治体の首長もいます。そこで得た結論は、多様な分野の専門家の意見が統合されている、と聞いています。従って、分科会の提言は政府が政策としてすぐに使えるものだと私は考えます。もちろん、もう一つのやり方として、分科会の提言を受けた政府が、経済により軸足を置いた政策判断をすることも有り得るでしょう」

 「ただ、どちらにせよ、政治家の判断は必ず責任を伴います。たとえ分科会の結論に沿った政策を政治が選択したとしても、その結果は当然、政治家が何らかの形で責任を負わなければなりません」

 ――「何らかの形」とは、選挙による国民の審判ですか。

 「まあ、そうです。選挙も含め、政治家は自身の判断について、常に政治的責任を負うことになります。ただ、そのときに政治が出した結論は、初めから『正解』があるわけではありません。経済優先か、感染拡大防止の徹底優先か、どちらに軸足を置くのが正解だったかは、将来になってみないとわからない。そこは政治家が深い洞察力と想像力をもち、与えられた知見をもとに総合判断するほかありません」

 ――政治が責任を負うというのは正論だと思いますが、専門家と政治の分担があいまい、と言われます。たとえば安倍首相の会見に、専門家会議の尾身茂・副座長(現分科会会長)が同席し、あいまいさに拍車をかけた、と言われました。

 「尾身さんが会見に同席し、医学にかかわる質問に答えるのを妨げるものはないでしょう。ただ、医学、経済、そのほか感染拡大防止にかかわる全てを加味して総合的に語るのは、総理大臣の仕事です。もちろん、新型コロナという未知のウイルスへの対処は極めて難しく、政治家も明確に答えにくいことは私も理解しています。重要なのは、このウイルスにはまだ未知の点があること、経済対策についても、財源は無尽蔵にあるわけではなく、そこには葛藤があるのだということを国民に率直に語り、理解を求めることです」

 ――しかし、政府側の説明は歯切れが悪くありませんか。

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 「同じ与党の仲間ですから…

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