日本海に突き出た石川県・能登半島の最北端で、かつて関西電力が進めた原発計画。現地で展開された数々の「工作活動」を元社員が証言しました。会長、社長の辞任に発展した関電の金品受領問題を追ってきた取材班が、原発立地をめぐる電力会社の水面下の動きに迫ります。
2019年9月末。関西電力の役員らが、高浜原発が立地する福井県高浜町の元助役・森山栄治氏(故人)から多額の金品を受領していた問題が発覚した。判明している受領者は77人、総額は3億6千万円相当に及ぶ。なぜ、こんなにいびつな関係が生じたのだろうか。
取材班は、金品をばらまいた森山氏の生前の足取りを追うため聞き込みを進めていた。その過程で、森山氏の関連会社に勤めていた元社員(73)の名前が浮かび、北陸にある地方都市の自宅に向かった。
「誰かが、いずれ取材に来ると思っていた」。インターホンを押すと、ドアのすき間から初老の男性が顔を出した。そう言い、突然の来訪にもかかわらず、記者を家の中に招き入れた。
こうして元社員の男性は、取材に応じ、詳細な証言を始めた。
元社員は、森山氏の話を一通り終えるとこんなことを口にしました。「高浜以外の原発でも、表にできないことはある」。取材班はその後、驚きの証言を得ます。
元社員は、兵庫県の高校を卒…