国宝仏像をスキャン、予想外の事実 閉じた口が元々は…

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編集委員・中村俊介

 奈良・興福寺に伝わる国宝の仏像群のうち9体に科学のメスが入り、新たな事実が明らかになりつつある。10年余り前に実施されたX線CTスキャン調査の詳細も、このほどまとまった。次世代の文化財修理や保護・管理の在り方を予感させる成果がぎっしり詰まっている。

 阿修羅像など八部衆や十大弟子のうち9体が、展覧会に合わせてX線CTスキャン装置で調査されたのは2009年のこと。当時、国内唯一だった九州国立博物館(福岡県太宰府市)の大型CTスキャナーは、あらゆる角度から透視した3D画像で対象を立体的にとらえ、情報量を飛躍的に高めた。

 九博博物館科学課長だった今津節生・奈良大教授(保存科学)らはその膨大なデータを10年にわたって分析し、このほど700ページ近くに及ぶ科学研究費補助金の報告書「興福寺乾漆像の研究」(本文編・図版編)を刊行。天平時代の造仏工程や代々の補修の履歴、さらには予想外の事実を明らかにした。

 たとえば製作途中での改変だ…

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