姉はLAで空手、弟は葉山でヨット 太平洋越しの対談

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構成=松本行弘 波戸健一
【プロローグ動画】空手の米国代表の姉・櫻、セーリング日本代表候補の弟・創。姉弟が語り合った(動画本編は記事後半に)
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 別々の国から、別々の競技で、東京オリンピック(五輪)を目指す姉弟がいる。姉の國米櫻(こくまいさくら)(27)は米国の空手代表を確実にし、弟の國米創(はじめ)(26)=株式会社アイヴァン=は日本のセーリング五輪代表の座をかけて今秋開催予定の選考大会に挑む。久しく会っていないという2人が、1年後の大舞台での再会に向け、それぞれ拠点にする米ロサンゼルス、神奈川県葉山町からオンライン対談で語り合った。

ハワイ出身 空手とセーリングを練習

 創 最後に会ったのは去年の10月?

 櫻 それから1度会っているような気がする。

 創 10月に日本の実家に帰った後は会ってないよ。インスタグラムで軽いメッセージ交換はちょいちょいしたけど。

 櫻 遠くにいるとは感じない。SNSで何となく様子は分かるし、気になれば簡単に連絡が取れるので。

 元セーリング選手の母がよく遠征して知人も多かったハワイで2人は生まれた。小中学生の頃、夏になると日本からハワイへ2カ月ほど渡ってサマースクールに通った。そこでともに空手とセーリングを習った。

 櫻 私はヨットが好きだったんですよ。でも、競技としては続けたくなかった。小学生の頃に日本で練習していた時、コーチから「もっとこうしろ、ああしろ」と言われた瞬間、「いや、何か違う」って。ただ楽しんで乗っていたかった。性格的にもコツコツやりたいタイプで、空手で練習し、できなかったことができるという感覚を味わえた。海外の試合にも出られるようになり、空手への気持ちが強くなった。

 創 櫻には「優等生感」があった。ヨットも速かったし、いつも比べられた。ちょっと腹立つなって。

 櫻 私には、あまり「創よりも」というのはない。

 創 眼中になかった?

 櫻 真面目に練習していたから。

 創 自分は真面目に練習しなかったから。ヨットも楽しむのがメイン。(セーリングを選んだのは)空手が嫌だったのと、櫻と似ているんだけど、ハワイで「なんでこの人(指導者)にきつく言われて空手をせんといけんのよ」と思ったから。ヨットには遊びとしての楽しみもレースの楽しみもある。空手は遊びのためにやる感じじゃないじゃん。

 櫻 性格だね。

 創 性格だな。

 創は岡山の高校でヨット部に入り、2年生で強豪の福岡第一高へ転校した。本格的に競技の世界に入り、法大に進んで大型ヨットで活躍。2017年にアメリカ杯のユースチームに参加した後、目標をフィン級(1人乗り重量級)での東京五輪出場に定めた。

 櫻は米国で力を認められて14歳で米国ジュニア代表に。岡山学芸館高時代までは日米を「行き来する」生活で、同志社大進学を機に拠点を日本に移した。空手が東京五輪の正式競技に追加されると、カリフォルニア州に移住した。

五輪延期「ホッとした」

 櫻 まだ五輪の延期が決まる前だった3月、「これからどうなるんだろう」と電話で話したよね。空手の五輪予選が延期になって(遠征先から)米国に戻ろうかという時期で、新型コロナウイルスの感染者がどんどん増えて「何てことだ」と。

 創 自分ではどうにもできない状況だったから焦りはなかったけど、コーチと連絡を取り合い、次に向けてどうしようかな、とは考えていた。(延期は)妥当だと思う。中止ではなく、延期でうれしかった。米国ではどう?

 櫻 選手は安心した。延期なのか、中止なのか、毎日、その話をしていたから。本当にスポーツどころではない状況になったけど、延期が発表された時は創と同じようにホッとした。

 〈感染者数や死者数が世界最悪の米国で暮らす櫻は、ホームステイ先のガレージを練習場所にして(技の正確さや力強さを競う)形(かた)を磨く日々を送る。創は当初、海外に置いていた2艇の自前のヨットをコロナ禍で取り戻せないトラブルに見舞われた。現在は1艇が戻り、葉山の海で練習を再開している〉

コロナの時代に練習することの意味、米国で空手を広める情熱、そしてお互いへのエール―。姉弟はまだまだ語り合います。

まるで遠距離恋愛

 創 数カ月ぶりにヨットに乗…

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