古い法律と手術法 世界から取り残される日本の中絶

有料記事オトナの保健室

机美鈴 田中ゑれ奈
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 統計によると、日本女性の中絶経験率は約10%に上ります。子どもを産むか産まないか。本来は自分で選択できる権利のはずですが、中絶はタブー視がつきまといがちです。研究者と性教育の講師、2人の識者の話から日本の中絶の現在地を考えます。

〈中絶問題研究者の塚原久美さんは「日本の中絶は根深い偏見とタブー視のもと、時代錯誤な法律と手法が残り、世界の動きから取り残されている」と警鐘を鳴らします〉

 つかはら・くみ 1961年生まれ。金沢大大学院で中絶問題の研究で博士号を取得。著書に「中絶技術とリプロダクティヴ・ライツ フェミニスト倫理の視点から」。

 一般に日本は自由に中絶を行える国だと思われています。でも、19世紀に初めての刑法ができた時から、堕胎罪は一貫して残り続けています。第2次世界大戦後、優生保護法(後の母体保護法)は人口爆発を抑える目的で中絶を事実上容認しました。身体・経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのある場合に限り、医師が中絶を行えると定めたのです。女性の権利を認めるのではなく、医師に決定権を与えた格好です。

 その後、中絶が年間100万件を超えて海外から「中絶天国」と批判を招き、1970年代には水子供養ブームが生まれます。「母の罪」「胎児生命の尊重」といった言説が広められ、中絶のタブー感が増強されることに。女性の主体性という観点はどこにもありません。

 日本も批准している女子差別撤廃条約では女性にのみ刑罰を科す法律を禁じており、堕胎罪の撤廃は世界の本流です。一昨年、カトリック教徒が人口の大半を占めるアイルランドでさえ、国民投票で中絶が合法化されました。昨年は韓国の憲法裁判所が堕胎罪に違憲判決を出しました。

記事後半では、「中絶イコール悪」と考えがちな子どもたちと向き合う、性教育講師のにじいろさんが登場します。

日本の女性はもっと怒っていい

 最近ではコロナ禍のもと、英…

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