首相がアドリブで力説した9月入学 逆風しのぐ体力なく
安倍晋三首相は2日、首相官邸で「9月入学」を議論してきた自民党のワーキングチーム(WT)座長の柴山昌彦前文部科学相と面会した。首相はその場で「法改正を伴う形での導入は確かに難しい」と伝えた。9月入学の導入について、事実上の断念に追い込まれた。
柴山氏は「今年度・来年度のような直近の導入は困難」とする党側の提言書を首相に手渡し、首相もこれに同調した形だ。
9月入学をめぐる政権内の風景は、つい1カ月ほど前まで全く異なっていた。
「これぐらい大きな変化がある中においては、前広(まえびろ)に様々な選択肢を検討していきたい」。4月29日の衆院予算委員会。新型コロナウイルス禍で学校の再開が見通せない中、9月入学について問われた首相はそう語った。東京都の小池百合子知事らの賛意も背に政権内の検討機運は高まった。
5月13日、首相は官邸で面会した河村建夫元文科相にWTの議論について「反対意見もあったんじゃないの」と水を向けた。「『絶対反対』の人はいませんでした」と河村氏が答えると、首相は「文教族が反対するかと思った」とほっとした様子だったという。
来年秋の党総裁任期が近づく中、首相がめざす憲法改正は困難な情勢にある。来夏の東京五輪の開催も政権内で「新型コロナの行方次第」との見方が広がる。「政治的レガシー(遺産)がなくなりつつある。首相本人は前向きだ」。9月入学について、このころ官邸関係者はそう語っていた。だが、5月半ば以降に急落した内閣支持率に合わせるように、その勢いも急激にしぼんでいった。
手元の原稿にはない言葉
5月中旬、自民党内からの「賛成多数」の報告を受けた安倍晋三首相は、「9月入学」導入へとさらに踏み込んだ。
「子どもの学びの場を確保し…