幻のタマネギ、民家の床下で種発見 今や地域ブランドに

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川田惇史
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 明治以降盛んに栽培されたが、昭和の終わりに一時姿を消し、「幻のタマネギ」と呼ばれる大阪府田尻町特産の「吉見早生(わせ)」。みずみずしくて甘みがあり、毎年の直売会でも即完売に。14年前、農家の床下に眠っていた種が見つかったことが、復活劇につながった。

 5月中旬の朝、田尻町嘉祥寺(かしょうじ)の10アールの畑で、吉見早生の収穫があった。普通のタマネギに比べ、平べったい形が特徴だ。

 「今年は適度に雨が降ってサイズは大きめだ」。町農業委員会の〆野(しめの)仁美会長(66)が、掘ったばかりの1個を手に取って切ると、切り口から水分がじわっとしみ出てきた。「生で食べてもうまい。ただ、水分が多いので保存できても1カ月ほどだ」と〆野さん。

 田尻町では海岸沿いの水はけの良い土壌が好まれ、明治時代にタマネギ栽培が始まった。泉州黄タマネギと呼ばれ、1942年の収穫量は2700トン。多くは吉見早生だったという。

 ただ、60年代までは2千トン近く収穫されたが、保存の利く新品種が出回るようになると、農家からも敬遠されるように。80年代後半に農協も取り扱いをやめた。

 転機は2006年だった。町おこしのため、地域ブランドを作りたいと、町と農業委員会が、泉州黄タマネギの復活を企画した。担当だった町職員の加藤寛昭さん(51)は「前年に府の『なにわの伝統野菜』の認証を受けたので、再び栽培すれば地域の魅力になると期待した」と振り返る。

20年たった種から芽が

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 町側は当初、今も種が市販さ…

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