独自

クラスターの象徴にされた屋形船 「都の勇み足だった」

有料記事東京100days

荒ちひろ
【動画】東京100daysプロローグ 新型コロナウイルスの記録
[PR]

東京100days プロローグ

 正月の余韻が残る1月18日夜。雨が降り注ぐ東京・隅田川を、1隻の屋形船がゆっくりと進んでいた。

 定員120人の大型船。畳敷きの船内で開かれていたのは、タクシー組合支部による新年会だった。

 長さ2メートルの机に掘りごたつの席が、2列に並ぶ。従業員が揚げたての天ぷらを運ぶ中、組合員ら約70人が食事やカラオケを楽しんでいた。

 五輪を控えて、インバウンド景気に沸く東京。タクシー運転手は外国からの旅行客を乗せる機会も多い。この日も、「『これから羽田空港に迎えに行くから』と、アルコールを控えている方が数人いた」と、接客を担当していた従業員は記憶している。

 気象庁によると、この日の東京の最低気温は1・5度。窓を閉めていたが、複数ある換気扇は動いていた。乗客がたばこを吸うためデッキへの出入りも多く、入り口付近では肌寒さを感じるほどだった。机一つに6人か7人。「決して密接するような状態ではなかった」という。

武漢からの客いたが……

 10日後の1月28日。

 屋形船を運航する「船清」(品川区)の女将(おかみ)・伊東陽子さん(67)は、1週間ほど前から体調を崩して休んでいた70代の男性従業員に連絡をとった。前日に肺炎と診断され、入院したと告げられた。

 女将の頭をよぎったのは、1…

この記事は有料記事です。残り1320文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【締め切り迫る】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら

東京100days 新型コロナウイルスの記録

東京100days 新型コロナウイルスの記録

2020年、東京の風景は多くの人が思い描いていたものとは全く異なる姿になった。未知のウイルスとどう向き合い、誰がどう動いたのか。首都・東京の100日間を追う。[もっと見る]