新型コロナウイルスの感染が世界規模で広がるいま、ミュージシャンの坂本龍一さんは、2009年に亡くなった忌野清志郎さんの言葉を思い出している。自らが監督する公演も中止となったが、この非常事態を見透かしていたかのような盟友の言葉には教えられることが多いという。公演の自粛を要請した政府や、苦境にあえぐ音楽業界をどう見ているのかも聞いた。

昨日と同じことをしていたら…

――坂本さんが代表・監督を務める「東北ユースオーケストラ」が今月予定していた公演も中止になりました

拡大する写真・図版坂本龍一氏

 「コロナウイルスが終息するまでは、たくさんの人間が集まらない方がいい。お客さんが何千人と来るし、オーケストラが100人超、合唱が120人ぐらい日本全国から交通機関を使って来ることになっていました。いくつもリスク要因があったので、中止にせざるをえなかった。1年間、子どもたちが練習して努力してきて、晴れの舞台を迎えるはずだったので残念ですが、健康を守る、感染を拡大させないということが何倍も大事だということはわかっています。人間は自然の一部だし、仕方がないですね」

――公演中止が相次ぎ、音楽や舞台の存続の危機を訴える声もあります。表現の場が縮小していく状況をどう見ていますか

 「人間は、歴史の中で何度も何度もこういうことを経験して、ヨーロッパの人口の3分の1が亡くなるとか、大きなパンデミックも経験してきている。それでもなお、音楽はなくならないまま、ずっと人類の歴史の中に存在してきたんですよね」

 「こうした状況では、昨日と同…

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