米国籍、生まれ育ちは韓国 心落ち着く「故郷」に帰化

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ソウル=神谷毅
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〈私は○○人〉韓国 印曜翰さん

 「あなたは、これで誇らしい韓国の国民です」。そう書かれた大きな垂れ幕が舞台上に掲げられている。昨年12月に韓国南東部の大邱で行われた「国籍証書授与式」。韓国籍を取得する外国人に義務づけられた式典で、この日は125人が出席した。全員が韓国旗を手にしている。

 出席者の容姿は様々だ。欧米系もいるが、東南アジア系が多い。以前に韓国籍を取得した「韓国人」たちが、伝統的な衣装・韓服で歌を披露して祝った。大きなスクリーンに一人ひとりの顔写真と名前が映し出され、全員に国籍証書が手渡される。「新韓国人」たちは証書を笑顔で家族に見せ、記念写真におさまった。

 韓国籍を取得した人たちは、条件さえ満たせば、出身国の国籍を捨てる必要がない。国籍を原則一つしか持てない日本とは異なり、2011年の国籍法改正で、欧米諸国のように複数の国籍を持つことが認められたからだ。出身国に帰国しやすくしたり、優秀な外国人を獲得したりすることが目的だった。

 印曜翰(インヨハン)さん(60)は、法改正を受けて韓国籍を取得した第一号だ。延世大学セブランス病院の国際診療センター長。韓国生まれの米国人で、目は青く、グレーの髪は整えられている。

 「パルリパルリ(早く早く)!」。診察中に知人から電話がかかってくると、印さんは韓国語でそうまくし立てた。「早く話して。まったくこの人は。診察があるときは電話してこないで。わかった?」

 「パルリパルリ」は、せっかちな韓国人の気質をよく表す言葉だ。きつい言葉のようだが、愛情の裏返し。印さんの韓国語には南西部の全羅道なまりがある。顔を見なければ韓国のおじさんと勘違いしてしまいそうだ。電話を終えた印さんは、今度は英語で診察に応じ始めた。

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 印さんの曽祖父は1895年…

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