原発は温暖化対策の切り札か 息巻く業界、浮かぶ課題

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ワシントン=香取啓介 編集委員・石井徹
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 地球温暖化対策として、発電時に温室効果ガス二酸化炭素(CO2)を出さない原子力発電は欠かせない「切り札」だと、原子力業界がアピールに躍起だ。だが、高いコスト、長期にわたる放射性廃棄物の管理をはじめ、原発に頼るには壁が多い。

 スペインで開催中の第25回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP25)。4日、欧州原子力学会が開いたイベントで、スペイン原子力産業フォーラムのイグナチオ・アラルーチェ会長は訴えた。「原子力は歴史的にも二酸化炭素(CO2)削減に貢献し、世界中でCO2と戦っている。称賛されてしかるべきだ」

 日本を含む世界150以上の原子力業界や学会は2015年のCOP21を前に「気候のための原子力」という枠組みを設立。温暖化への危機感が世界的に広がる中、対策としての原発の必要性を盛んに訴える。

 国際原子力機関IAEA)も10月、初めて「気候変動と原子力の役割」と題した国際会議を開いた。「世界的に原発の著しい利用増が無ければ、有害な排出の削減と、気候変動との戦いという目標の達成は困難になる」とコーネル・フェルータ事務局長代行(当時)は強調した。

 国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によると、パリ協定で定める、産業革命前より平均気温の上昇を2度未満、できれば1・5度に抑えるには、7割を占める化石燃料による発電を大幅に減らし、2050年までに炭素排出が少ない電源を8割以上にしなければならない。

 化石燃料を使う火力発電と異なり原発は発電時にCO2を出さない。世界に約440基(長期停止中含む)あり、IAEAによると、世界の電力供給の約1割、低炭素電源では水力に次ぐ。フェルータ氏は原発により年20億トンのCO2排出を減らせていると語る。

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