合唱コンの伝統「歌回し」とは 審査発表前の魔法の時間
毎年10月下旬に開催される全日本合唱コンクール全国大会(全日本合唱連盟、朝日新聞社主催)の高校部門の会場には、観客席で審査発表前に自然発生的に始まる「歌回し」という風習がある。結果を待つ緊張の時間が、魔法のように一瞬にして和やかな雰囲気になる。いつ始まったのかは定かではないが、長年にわたり脈々と受け継がれてきた。26日に岡山市である今年の大会でも、軽やかな歌声が響くことだろう。
歌回しは観客席にいる生徒たちが、自発的に始める。全校の演奏が終わり休憩に入ると、会場の一角から不意に「○○高校」と呼ぶ声が上がる。指名された学校の生徒は「○○高校です」と自己紹介し、1分ほどの歌を披露。そして次の学校を呼び、呼ばれた学校はまた歌を披露する。こうして各校がバトンタッチをしながら、歌をつないでいく。
曲は各校が自由に選び、時には踊りを交えることもある。審査結果を待つ緊張の時間が、軽やかな歌声のリレーと拍手で包まれる。年によっては最後に、合唱の名曲として知られる「大地讃頌(さんしょう)」を会場全体で歌うこともあるという
最初に声を上げる「リード役」は、歌回しを毎年経験している全国大会の常連校。ここ数年リード役を担うことが多いのが、実力校の岡崎高校(愛知)だ。指揮者の近藤恵子さん(74)は「休憩が始まってすぐに他の学校を呼ぶと、始まったぞ、という空気が会場全体に走るんです。全国大会でしか味わえない醍醐(だいご)味です」と魅力を語る。
全国目指すモチベーションに
ところで、この習わしはいつ始まったのか。
公式のイベントではないため…