石川)漆の灯が照らす未来 里山暮らし

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萩のゆき
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 集落の外れ、小高い丘の上に1本の木を囲むように立つ見慣れぬ櫓(やぐら)。夏の頃から「木の伐採のため?」「掘削の足場?」と気になりながら歩いていた。

 背後は森、手前はひらけて我が家の隣のばあちゃんの畑とじいちゃんのお墓がある。ちょうど彼女の赤い自転車がとまっていたので、確かめに丘の上まで行ってみた。

 藤の蔓(つる)を巻きつけて組んだ櫓の真ん中に囚(とら)われた人のように漆(うるし)の木があった。幾筋も櫛(くし)目のような「漆掻(うるしか)き」の線が刻まれている。まるで血塗られたかのように黒々と樹液が固まり、足元の枯れ葉にさえ血痕のように黒い滲(にじ)みが滴る。ただならぬ気配にぞくっと身震いする。刺青のような文様が「俺は生きている」と伝えてくる。

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 普通1本の木から採れる漆は…

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