急発展、高まる島民の愛国心 ロシア人助手が見た択捉島

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ウラジオストク=中川仁樹
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 ロシアのプーチン大統領が9月、今年末までに前提条件なしで平和条約を結ぶよう安倍晋三首相に提案した。日本は領土問題を解決した上で、同条約を結ぶ立場。安倍首相はプーチン氏と会談を重ね、共同経済活動により領土交渉の機運を高める狙いだが、領土問題が棚上げされる懸念も出てきた。朝日新聞のロシア人助手が9月、択捉島(えとろふとう)で取材したところ、ロシアが軍事と経済の両面を強化しており、島民には領土交渉に否定的な声も目立った。

 〈北方領土訪問の特殊性〉 日本政府は領土問題の解決まで原則として北方領土を訪れないよう日本人に要請している。ロシアビザ取得など、ロシアの法律に従って北方領土に入ることが「四島は日本の領土」という日本政府の主張を傷つけかねないからだ。朝日新聞がロシア人助手を派遣したのもこのためだ。例外が「ビザなし交流」の枠組みで、日ロ両政府は双方の法的立場を害さない形で実施することで合意している。

「日ロで平和条約あってもいいが、領土は…」

 択捉島の中心都市、紗那(しゃな、ロシア名・クリリスク)に、島民に「シティーモール」と呼ばれて親しまれている施設がある。2015年にでき、市役所やスポーツジム、ハリウッド映画が楽しめる映画館まである。

 正式名称は「文化スポーツセンター」。ロシア政府が主導した島の発展を象徴する建物だ。運営会社のリュードビク・ウラリスキー社長(56)は「島の重要性を強調し、住民が見捨てられたと感じないようにするものだ」と説明する。

 ロシアのプーチン大統領は9月、安倍晋三首相に対し、今年末までに前提条件なしで日本と平和条約を結び、領土問題などの懸案は、条約締結後に協議することを提案。ウラリスキーさんは賛成だ。「島は忘れてほしい、ということだ」

 早期の平和条約締結に賛成するが、領土交渉には反対という島民は多い。雑貨店のイリーナさん(60)は「私たちには愛国心がある。平和条約はあってもいいが、領土は渡さない」と強く言った。

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