「外套」を待ちながら(小原篤のアニマゲ丼)

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 いつまでもできない「外套」を待つこと、それは私にとって、アニメーションを愛する人生そのものです。

 1941年生まれのロシアのアニメーション作家ユーリ・ノルシュテインさんが「狐と兎」(12分、1973年)、「あおさぎと鶴」(10分、74年)、「霧につつまれたハリネズミ」(10分、75年)、「話の話」(29分、79年)で世界を魅了し、そしてゴーゴリの名作をアニメ化する「外套」に取りかかって…………………いまだにできてないっ!

 初めて作品を見たのは86年か87年、19歳の頃です。確か吉祥寺のミニシアターで特集上映をやっていて、まずは切り紙アニメでイコンのキャラクターが動き出す「ケルジェネツの戦い」(10分、71年、イワン・イワノフ・ワノー監督と共同演出)の、振り上げた剣の動きが音楽とシンクロするカットでゾワゾワッと鳥肌が立ちました。「霧につつまれたハリネズミ」はまったく見たことのない映像世界。まるで魔法のように、霧に浮かび霧に消える動物たち。キャラクターの質感から表情のつけ方から霧の表現まですべてが完璧なのに、どうやって作っているのか皆目わからない! そして魂の奥底か彼岸のかなたへ連れて行かれたような「話の話」のトリップ感! というわけで、その瞬間から「外套」を待つ人生が始まったのです。ノルシュテイン作品を見た人は、たいがいそうです。

 初めてノルシュテインさんご…

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