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(公約を問う)4:外交・安全保障 「中・韓」「沖縄」乏しい打開策

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外交・安全保障を巡る主な動き

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外交の基軸をどちらに置くか

 安倍政権は参院選後、日米同盟強化へ本格的に乗り出す。焦点になるのが、集団的自衛権の行使容認。共産、社民両党が反対する一方、民主党の態度ははっきりしない。中韓との関係や沖縄の米軍基地問題など課題は多いが、各党の公約から打開策を読み取るのは難しい。

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■集団的自衛権の行使/自民前向き、公明慎重

 集団的自衛権の行使を憲法解釈の変更で認めることに、首相は強いこだわりを持ってきた。

 首相は再登板後の今年2月、「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)を開いた。2007年に第1次安倍内閣で有識者による懇談会を立ち上げて検討したが、退陣で実現しなかった。いわば仕切り直しだ。

 集団的自衛権は米国など密接な関係にある他国への攻撃に反撃する権利で、歴代政権は行使を違憲としてきた。今回、行使容認を公約には入れていないが、公約のもとになる総合政策集では「必要最小限度の自衛権行使(集団的自衛権を含む)を明確化」を掲げ、容認を示唆している。公約に制定を掲げる国家安全保障基本法は、この行使の手続きを定めるものだ。

 首相はいま、「懇談会で議論をしていただきたい」と繰り返す。中国の海洋進出や北朝鮮の核、ミサイル問題は、日本をとりまく懸念材料だが、集団的自衛権の行使容認をめぐっては逆に「追い風」(懇談会メンバー)になっている。

 政権内ではこんな「最速シナリオ」も語られる。

 今秋に懇談会が首相に行使容認を提言し、年内に憲法解釈変更を閣議決定。来年の通常国会に国家安全保障基本法案を提出――。

 ただ、それも参院選勝利が前提になる。世論が割れがちな外交・安全保障の分野で、首相は持論を抑えている。アベノミクスによる景気回復を優先させ、高支持率を保つ狙いだ。まずは衆参のねじれを解消しなければ、法案を通すのが難しいという事情もある。

 自民党公約の内容も、昨年の衆院選とさほど変わらない。日米同盟強化、国家安全保障会議(日本版NSC)設置、海洋を守るなどの項目はそのままだ。

 中韓との間の歴史認識問題では、首相は4月に国会で「侵略の定義は定まっていない」と答弁し、波紋が広がった。首相は主張を変えていないが、7月3日の党首討論会では、「侵略をしなかったとは言っていない」とかわした。

 ただ、集団的自衛権の行使容認には、連立を組む公明党が慎重だ。山口那津男代表は6日のBS朝日の番組で「海外で武力を使う。国民が、諸外国が承認しますか。(歴代の政権は)やっちゃいけないと言ってきた」と述べ、丁寧な議論を求めた。

■自民、日米同盟の強化前面に

 自民党はこのほか、年内にまとまる新防衛大綱について、総合政策集で「予算を充実させ装備や人員を確保」と明記。すでに予算の大幅拡充や自衛隊の敵基地攻撃能力保有を提言し、防衛省が検討を始めている。参院選で自民党が勝てば動きが加速しそうだ。

 公約では「国際平和協力一般法の制定」も明記。自衛隊の海外派遣について包括的に定めるものだ。米国主導のテロとの戦いでのインド洋での給油活動、イラク戦争後の復興支援など、個別の法律で対応してきたが、一般法制定で自衛隊の海外派遣が円滑になる。

 こうした政策は、「日本が姿勢を示したうえで米国に対応を求める」(政府高官)という、首相の同盟強化論の表れだ。公約には首相とオバマ大統領がにこやかに握手する写真をあしらい、「日米同盟を基軸とした戦略的外交と揺るぎない安全保障」をうたう。

 公約では「アジア太平洋地域の抑止力を高める」として、1997年以来となる「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)改定も強調。両政府は、年内の外務・防衛担当閣僚会合を経て来年秋にも合意すべく、協議を進めている。

 日米同盟のアキレス腱(けん)である、沖縄県の米軍普天間飛行場の移設問題でも踏み込んだ。日米で合意した名護市辺野古への県内移設について、昨年の衆院選では触れなかったが、参院選公約に「名護市辺野古への移設を推進」と書き込んだ。

 政府は移設に向け3月に辺野古沖の埋め立てを県に申請している。県外移設を求める仲井真弘多知事が許可するめどは立っていないが、首相は6月、オバマ大統領との電話協議で「政治的リスクを伴うが、着実に進める」と伝えている。

■民主、自民との違い不明確/共・社、隣国関係の停滞批判

 安倍政権は米国と環太平洋経済連携協定(TPP)でも連携を強めるが、中国、韓国との関係は停滞が続く。それを共産、社民両党は正面から批判する。

 共産党は公約の半分近くを日米同盟強化や歴史認識問題への批判に割き、安倍政権を「日本をアメリカに売り渡そうとしている」と断じる。社民党も、普天間飛行場の県外移設や、新型輸送機オスプレイの沖縄配備反対を訴える。

 ただ、アジア外交では各党とも妙案がない。「領土問題の国際会議常設」(生活の党)、「領土紛争は国際司法裁判所を活用」(日本維新の会)などを挙げるが、実現は難しそうだ。

 連立を組む公明党は中ロ韓各国との「定期的な首脳会談を実現」と明記した。山口那津男代表が今年1月に訪中し習近平総書記(当時)と会談するなど仲介へ動くが、中韓との首脳会談は調整が難航する。

 昨年まで3年間政権を担った民主党の公約に、自民党との明確な違いは見あたらない。日米同盟強化、日本版NSC設置、領土・領海を守る――。「米軍再編は日米合意を着実に実施」とし、普天間飛行場の県内移設も認めている。

 ただ、参院選後に焦点となる集団的自衛権については、態度を明らかにしていない。民主党内には、集団的自衛権の行使を認める立場から認めない立場まであり、ばらつきがある。海江田万里代表は「しっかりと議論しなければいけない」と述べるにとどめる。

 尖閣諸島をめぐり中国との緊張が続くなか、アジア外交は「東シナ海を平和、友好、協力の海とする」と記すが、具体性に乏しい。政権交代を果たした09年衆院選のマニフェストで「東アジア共同体の構築」「対等な日米関係」を掲げて4年。外交、安保政策の新たな軸は見えない。

     ◇

〈視点〉かすむアジア 各党は語って

 【政治部・山岸一生記者】安倍晋三首相が経済政策を語る口癖「この道しかない」にならうなら、さしずめ「日米同盟しかない」だろうか。政権は参院選後、集団的自衛権の行使容認も含め、新たな同盟強化に踏み出そうとしている。改憲より現実的な日程だ。

 わずか4年前、2009年の政権交代では鳩山由紀夫首相のアジア重視策が注目された。米国型グローバリズムへの違和感や、急成長する中国経済への期待があった。だが民主党政権の混乱や、尖閣問題などでの中国への反発もあり、今やアジア外交はかすんだ。

 ただ、この4年の国際情勢の変化の速さをふまえれば、数年後も米中接近などでまた違う景色だろう。各党は、アジア外交にも力点を置いて語って欲しい。

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