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(良識の府どこへ)組織内候補、背負うしがらみ

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約8千人が訪れた全国郵便局長会の総会会場。地区ごとに席が分かれ、椅子が隙間なく置かれていた=5月19日、新潟市中央区

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組織内候補を擁立する主な団体

 信濃川沿いにある新潟市のコンベンションセンターに、観光バス数十台が次々と横付けされた。

 5月19日、全国郵便局長会(全特)の総会。「郵政事業で役割を果たすことをお約束します」。約8千人を前に、参院選比例区に自民党から立候補する柘植芳文氏(67)があいさつした。

 左右の壁には柘植氏のポスターが隙間なく貼られた。「皆さんの票の大きさがものをいう」。柘植氏の後援会長を務める長谷川憲正・元参院議員(70)がはっぱをかけた。

 柘植氏の選挙は全特の総力戦だ。小泉純一郎元首相の郵政改革で完全民営化が決まっていたゆうちょ銀行やかんぽ生命の株売却は「努力目標」まで巻き戻したが、ゆうちょ銀行の収入源となる住宅ローンなど新たな事業への参入はまだ認められていない。3年前に全特顧問だった長谷川氏が国民新党から再選をめざしたが落選、「身内」の国会議員は欠かせない。

 地域によっては、郵便局長に「1人で30票」の目標が課された。東日本のある局長は「最近は政治色を嫌うお客さんも多く、声をかけられるのは親戚と知人くらい」と悲鳴をあげる。

 個人名の得票順に当選が決まる比例区には、組織が支援する候補が顔をそろえる。自民党は看護連盟や医師連盟、民主党は労働組合出身者らがいる。

 こうして誕生した参院議員は、組織のために働く。「派遣労働者が守られる枠組みを作りました」。6月15日、大阪・難波での決起集会で、民主党の川合孝典氏(49)が一礼した。

 製造業や流通業などの労組がつくるUAゼンセンで政策立案を担当してきた川合氏。6年前に初当選し、5年を超えて働いた契約社員らが正社員のような無期雇用になれるよう労働法制の見直しに尽力した。

 ただ、「本業」以外の苦労も絶えない。全国の加盟労組を回ったのは計3200回。支持者の国会見学への対応は多い時に1日5回を超え、計3万人。「自分の時間がなくなるのはきついけど、選挙に関わってくれる人への説明責任です」

 業界代表の議員の陰で、支持基盤の弱い議員は動きづらさを感じている。

 2007年に無所属で当選し、初登院時に「無」と書かれた扇子を広げてアピールした川田龍平氏(37)。09年12月にみんなの党に入党した。「無所属では入りたい委員会にも入れない」

 取り組んだのは被災者支援。昨年6月に超党派の議員立法で、原発事故から逃れて自主避難した母子への生活支援を国に義務づける「原発事故子ども・被災者支援法」を成立させた。

 その後、法律を実際に動かす基本方針は策定されていない。にもかかわらず、原発再稼働を求める経済団体の影響を受ける政党所属の議員が議員連盟を離れていく。「業界が支え、官僚も協力する法律とは違う」。秘書は話す。

 北海道大大学院の山口二郎教授(政治学)は「議員立法は少数者の権利を守るためのものが多く、党派の谷間で成立のハードルは高い。業界代表に比べ支持基盤の弱い議員が活動しやすいよう、議長の呼び掛けや超党派のネットワーク作りが必要だ」と話す。

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