(社説)経産相辞任 政権のおごりの帰結だ

社説

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 地元の有権者に公職選挙法が禁じる寄付をした疑いをもたれていた菅原一秀経済産業相が辞任に追い込まれた。初入閣からわずか1カ月半。かねて疑惑を指摘されていた菅原氏を起用した、首相の任命責任が厳しく問われねばならない。

 辞任の引き金になったのは、国会でかつての疑惑を追及されていた先週、菅原氏の公設秘書が支援者の通夜で香典を渡していたことを、週刊文春が現場の写真つきで報じた記事だ。

 菅原氏は当初、きのうの国会で事情を説明するとしていたが、一転、その前に安倍首相に辞表を提出した。「国会が停滞することは本意ではない」と記者団に語ったが、公選法違反の疑いという、議員としての進退も問われる重い事実に正面から向き合う姿勢はうかがえない。

 政治家が選挙区内で金品を贈るのは、公選法で原則禁じられている。香典は本人が渡す場合のみ認められるが、秘書が代わりに持参するのは違法だ。

 菅原氏はきのう、秘書が香典を渡した事実は認めたが、自分はそのことを知らずに翌日の葬儀に参列し、遺族の指摘で秘書の分の香典を返してもらったと説明した。本当に秘書が断りもなく、そうしたのか、にわかには信じがたい。その通りだとしても、公選法のイロハのイを事務所内に徹底していなかった菅原氏の監督責任は重大だ。他に同様のケースが繰り返されていたとしてもおかしくはない。

 もともと指摘されていた高級メロンなどを有権者に贈っていたとの疑惑は、10年前に朝日新聞や週刊朝日が報じていた。閣僚の人選にあたり、首相ら政権中枢に報告がなかったとは思えない。公選法違反の寄付行為の公訴時効(3年)を過ぎていることから、問題を甘く見たのではないか。批判されても乗り切れると判断したのなら、1強政治の慢心というほかない。自らに近い菅原氏を推したとされる菅官房長官の責任も重い。

 閣僚を辞任したからといって、問題をうやむやにすることは許されない。この政権では、疑惑の追及から逃れられないとみると役職を辞めて幕引きを図り、ほとぼりが冷めたころに復権するケースが後を絶たない。口利きに絡む金銭授受疑惑で経済再生相を辞任した甘利明氏は、その後、説明責任を果たさぬまま、先月の自民党役員人事で税制調査会長に就任した。

 首相は記者団に「任命責任は私にある」と語った。閣僚の辞任に際し、これまでも繰り返された発言だ。一連の疑惑について、国会など公の場で、徹底的に菅原氏に説明をさせる。それができなければ、今回も口先だけということになる。

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