(社説)高校野球 選手の健康を出発点に

社説

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 第101回全国高校野球選手権大会があす、阪神甲子園球場で開幕する。

 1世紀を超える歴史を重ねられたのは、球児の一投一打が多くの人を魅了してきたからだろう。選手は全力でプレーし、練習の成果を競う。そのためにもケガをしたり体調を崩したりしないように努める。それが高校野球を含むすべてのスポーツの出発点である。

 しかし現実には、肩やひじへの負担が大きい投手を中心に、ケガなどで思うようにプレーできなくなる高校生がいる。この長年の懸案にどう対応するか。

 新潟県高校野球連盟は昨年末、今春の県大会から投手に投球数制限を導入する方針を打ち出した。実施は見送られたが、日本高野連は4月、新潟からの問題提起を受けて「投手の障害予防に関する有識者会議」を発足させた。

 会議は11月に提言をまとめる予定で、大会終盤の数日間など一定期間での投球総数を制限する方向で議論している。「複数の有力投手をそろえられる強豪校がますます有利になり、大会の面白さが損なわれる」などの反対論は根強いが、選手の健康を第一に考える必要がある。

 この夏の岩手大会で決勝に進んだ大船渡の投手起用も、議論に大きな一石を投じた。好投手として注目され、準決勝で完封した佐々木朗希(ろうき)投手(3年)が翌日の決勝に出場せず、同校は敗退。監督は「故障を予防するため」と説明したが、「甲子園」を目前にしての登板回避は大きな話題になった。

 大船渡の対応は、勝ち進むと大会終盤に連戦となりがちな日程を巡る課題も浮き彫りにした。地方大会の開幕日は6月下旬から7月中旬までと幅があり、遅めのところは開幕を早めるのも一案だろう。定期試験などの学校行事や地域の事情がからむが、協議を重ねたい。

 6日からの全国選手権では今年から休養日を増やし、従来の準決勝前に加え決勝前にも設ける。投手の肩やひじの関節機能のチェックでは、例年通り地元で検査した結果を大会前に提出し、準々決勝と準決勝に登板した投手に対して検査を行う。投球数は現行通り制限しないだけに、入念に調べてほしい。

 猛暑が続く中、熱中症を予防する対策も不可欠だ。昨夏に続いて球場に待機する理学療法士が選手の動きを確認するが、試合中に給水や休憩の時間を柔軟にとる大会運営が重要になる。

 日本学生野球憲章は、基本理念で「部員の健康を維持・増進させる施策を奨励・支援し、スポーツ障害予防への取り組みを増進する」とうたう。改めて思い起こしたい。

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