(社説)五輪まで1年 理解得る努力をもっと

社説

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 東京五輪の開会式まで、あすでちょうど1年となる。

 各競技会場では先月末からテスト大会が本格化している。IT化が進んで利便性が高まる一方、思わぬミスが大きな混乱を招くもろさをはらむ。課題を洗い出して本番に臨みたい。

 まずは酷暑への備えだ。

 ことしの東京は梅雨寒が続いたが、近年の気象状況を考えれば幾重もの対策が必要だ。屋外競技を中心に、観客やボランティアをはじめとする関係者への情報伝達、日かげの確保、飲料の提供、救護体制などを点検してもらいたい。外国から来る選手や観光客への目配りも、むろん忘れてはならない。

 円滑な輸送も重い課題だ。

 五輪組織委員会は、大会期間中の交通量を東京圏で1割、会場周辺で3割減らすことをめざす。会場を集約して移動などの負担を軽くする「コンパクト五輪」構想が頓挫したことが、こんなところにも影響している。

 きのうからは、官民で在宅勤務や時差出勤などに取り組む大がかりな社会実験も始まった。本番時には首都高速道路を走る一般車両の通行料金を高くする措置も検討するという。

 だが高速道路が順調に流れても、そのぶん一般道が渋滞したら市民生活は混乱する。企業などに大会中の勤務態勢や稼働時間の変更を要請しているが、理解と協力を得るには、相手の事情を十分配慮したうえでの丁寧な説明が欠かせない。

 競技チケットの第1次売り出しをめぐっては、その「配慮と説明」の不足が問題となった。

 転売やテロを防ぎ、かつ販売コストを抑えるために、組織委のホームページ経由の申し込みに限り、個人情報を登録させたのはやむを得ない面がある。だがサーバーの容量不足や手続きの複雑さが重なって、長時間待たされたり登録できなかったりした人が続出した。販売するチケットの枚数も一切明らかにされず、釈然としない思いを引きずる人は少なくない。

 さらなる混乱を避けるべく、秋の第2次売り出しは当初予定していた先着順方式をやめ、第1次と同じく抽選とすることが決まった。見通しの悪さにあきれる。ネットに慣れていない層も含め、希望する人ができるだけ観戦の機会を得られるよう、工夫を重ねてほしい。

 これだけのプロジェクトになると周囲に様々な迷惑が及び、不都合も出る。巨大化した五輪の負の側面を率直に認めて、運営の透明度を高め、説明を尽くし、見直すべき点は柔軟に見直す。そんな姿勢が欠かせない。

 残り1年。市民との対話力を磨くことが、大会を成功させるうえで運営側に求められる。

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