(社説)参院選 地方対策 将来像が見えない

社説

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 参院選の全国の投票所数は約4万7千カ所で、6回連続して減った。最多だった18年前より6千カ所あまり少ない。人口減少を反映した数字といえる。

 縮んでゆく地域社会は、これからどうなるのか。多くの有権者が行く末を案じている。

 各党には、こうした不安への対応が求められている。

 地域の将来像をどう描くか。市町村は現状のまま続くのか。国と地方の関係はどうあるべきか。しかし、論戦は低調だ。

 自民党は「地方創生」の旗を振る。人口減少問題の克服を目的に、2014年から掲げる看板政策だ。15年度から19年度までの5年間を第1期と定め、東京一極集中の是正、出生率の向上などをめざしてきた。

 だが、最大の眼目で、20年までの是正を唱えた東京一極集中は、むしろ進んでいる。鳴り物入りの政府機関の地方移転も、文化庁を京都へ移すくらい。

 そんな中で、目立つのはプレミアム商品券などを生んだ地方創生関連の交付金だ。対象には道路や港湾などの公共事業も含まれ、計上した予算額は累計で9千億円近い。

 地方への人材派遣、企業版ふるさと納税、東京23区から移住して就業する人への100万円助成などの制度も設けた。人口減への危機意識を高める効果はあったろう。

 けれども、政府の検証で、主な15項目の目標のうち、すでに達成したのは「若い世代の正規雇用の割合」など三つだけ。手詰まり感がありありだ。

 自治体に知恵を出させ、行司役の政府が認めた事業に交付金を渡す施策の限界は明らかだ。しかも、こんな手法は国と地方の主従関係を復活させ、地方分権改革に逆行している。

 本来、地域づくりは、地域の事情を熟知する自治体が担うべきだ。そのためには、現場を知らぬ国が補助金や交付金を配るのではなく、自治体に恒久的な財源と権限を渡す分権を大胆にすすめる必要がある。

 こうした考え方を自民党は取らず、来年度から地方創生の第2期に入る。公約に列挙した地方対策のうち、分権改革は1カ所だけというのが象徴的だ。

 驚くのは、自治体側から大きな不満が聞こえないことだ。全国の地方税収が過去最高を記録するなか、仕事も責任も増える分権より、交付金の方が都合がいいのだろうか。

 野党には、分権志向が見られる。立憲民主党国民民主党は地方が自由に使える「一括交付金」の復活を訴える。日本維新の会も分権推進だ。

 ただ、いずれも具体性に欠ける。残された選挙戦、徹底した地方対策の論戦を期待する。

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