(10代の君へ)恐怖心、向き合い開けた道 浅田真央さん

10代の君へ

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 全国を巡るアイスショー「浅田真央サンクスツアー」を約1年前に始めて、「ああ、幸せだな」と思えるようになりました。そう感じたのは初めてです。幸せは「柔らかい」ものじゃないですか。選手時代はそこまで気持ちが柔らかくありませんでした。強くないと自分に負けてしまう。幸せだと考える暇がありませんでした。

 15歳以降は、心から楽しいとは思えなかったです。勝ち負けだけではなく、年齢と共に体形が変わって、ジャンプに乱れが出て思うように跳べなくなったり、試合で恐怖心が出てきたりしたからでしょうか。自分自身に対するつらさがあり、色々なことが重なって、「ああ、スケートって、どういう思いでやっていたのかな」と思い返すことは何度もありました。

 今思えば、よくやっていたなと。引退すると決めた時は、体も心も限界でした。自分がしたいことがよくわからなくなってしまい、目の前が真っ暗になりました。

 誰にでも、前が見えなくなるときがあります。私も引退して目の前が真っ暗になったとき、旅に出てみました。焦らずゆっくりと、ただ時が流れるのを待ちました。何ができるのかな、何がしたいのかな、とスケートから離れて、自分に問いかけました。そうして、また新しいことに挑戦する気持ちが芽生えたのだと思います。

 東日本大震災で被災した子どもが海外に行く活動を支援しています。なかなか元気になれなかった子も、海外から帰ってきた後、元気で笑顔で話せるようになったそうです。日本を離れて、海外の人と触れ合う中で、自分の使命を感じ、楽しいと思えることもあり、悲しさを少し忘れられたのだと思います。

 何でもいいので、何かに一生懸命向き合うことができれば、その経験が、また新しい道を開いてくれることがあります。私も、ショーをやりきった後は、またやりたいことが自然に見つかるのを待ちたいと思います。(聞き手・後藤太輔

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 あさだ・まお フィギュアスケーター 1990年、愛知県出身。15歳でフィギュアスケートのグランプリ(GP)ファイナル優勝。2010年バンクーバー五輪銀メダル。17年に現役引退。

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 皆さんも体を動かしてみて下さい。きっと前向きになれると思います。

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