小さな町に海外客呼び込め ジビエ料理にサファリも 大槌でツアー

東野真和
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 観光地でもない小さな町に海外客を呼び込めないか。岩手県大槌町で20、21の両日、そんな関係者の期待を乗せたツアーを初めて迎え入れた。目的地に選ばれた決め手は、地域課題から生まれた企画だった。東日本大震災前にはなかった三陸地域の試みとしても注目されている。

 20日、台湾の都市部から来た富裕層の一行13人が大槌町に到着した。17日からミシュランガイドに載る仙台の料理店や世界遺産中尊寺などを巡っていたが、ここでのプログラムは、それとは異質な「日本の田舎」を体験する内容だ。

 老舗割烹(かっぽう)で旬の山菜料理などを食べた後、鹿の解体を体験。その肉や、冬眠前に捕獲したクマ肉の煮込み料理を試食した。参加者によると、台湾では野生動物を見かけることも食べることもほぼない。台北から来た呉大衛さん(60)は「ジューシーで軟らかい」とおかわりして写真を撮っていた。

 夜はバスで町外れに。田畑や路上に出没する鹿を見る「ナイトサファリ」を楽しみ、翌朝は養殖サーモンの池で釣った魚を刺し身で食べた。昼は住民に郷土料理を振る舞われながら震災体験などを聞いた後、三陸鉄道に乗って車窓の海を見ながら地酒を堪能した。

 震災後の大槌町では、耕作放棄地が増えたことによる獣害の増加と、水温の上昇によるサケなど主要魚種の記録的不漁に悩んでいる。その対策として、鹿を駆除してジビエ肉として有効活用したり、サーモンを養殖したり、地元産米と湧水(ゆうすい)でその料理に合う地酒を醸造したりしている。

 目立った観光名所がない大槌町の観光交流協会や自然体験NPO「おおつちのあそび」は、それを逆手に取った企画を「ツナガル株式会社」(大阪市)の旅行部門に提案。ツナガルは、日本通の人気ブロガー蕭嘉麟さん(56)を呼び、さらに内容を練った。ツアーを募集すると数日で満員になった。

 大槌のような小さな町は大人数の受け入れ態勢がない。他にはできない内容で、少人数向けの付加価値の高い旅を提案して富裕層を呼び込みたい。ツナガル側も同じ考えで場所を探していた。同社の許雅媚マネジャーは「外国人への抵抗感から受け入れを断られることが多いが、大槌は快く迎えてくれる人たちがいた」という。

 「おおつちのあそび」の大場理幹代表(27)は「ジビエもサーモンも反応がよかった。観光地ではないが、食や人と触れあいに来る場所として来てもらいたい」と手応えを感じていた。東野真和

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