50年守り続けた「石垣の里」、地震で一部崩落「よく耐えてくれた」

川村貴大
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 「石垣の里」と呼ばれ、美しい景観で知られる愛媛県愛南町の外泊(そとどまり)地区。海に迫った山の急斜面に、石垣で囲まれた30軒ほどの民家や民宿が立ち並ぶ。

 豊後水道沖で17日夜に起きた地震で、愛南町は震度6弱を観測し、地区の石垣が10カ所ほどで崩れ落ちた。

 そのうち3カ所では、家々の間を縫うように走る狭い階段や通路を、崩れた石垣が塞いだ。

 自宅で被災した吉田幸稔(ゆきとし)区長(61)は「今までここで体験した揺れの中で一番強かった。石垣が崩れた箇所の数としても今までで一番多い」と話す。

 外泊地区は、幕末から明治初期に山を切り開いてつくられた。冬に北西から潮を巻き上げて吹き込む、強い季節風から家を守るため、最高で6メートルほどの石垣が築かれた。

 外泊地区で民宿「石垣荘」を営みながら、およそ50年にわたって石垣の修復に携わってきた吉田清一さん(70)は、地震に強く、水はけが良い石垣にするため、長年の経験で培った「ちょうど良い隙間」を空けながら大小の石を積んできた。

 「被害がこれくらいで済んだからよかった。ショックというより、『よく耐えてくれた』という感謝の気持ちのほうが大きい」と落ち着いた口調で話した。

 今回の被害を受けて、吉田さんが会長を務める「外泊いしがき守ろう会」のメンバーで石垣の修復に取りかかる。5月末までにすべての修復を終えることを目指している。

 守ろう会のメンバーは平均年齢が70歳を超えているといい、吉田さんは「これからもできるだけ今の状態の石垣を残していきたい」と意気込んだ。川村貴大

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