犯罪被害「相談せず」4割超 8割が給付・賠償受けず  警察庁調査

編集委員・吉田伸八
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 警察庁は犯罪被害に関するアンケートを実施した。被害に遭った際に「どこにも相談していない」と答えた人が4割超おり、特に児童虐待や性的被害、配偶者らからの暴力(DV)でその割合が高かった。事件に関連して給付や賠償などを全く受けていないという人は8割を占めた。

 警察庁は「これまで指摘されてきた被害の潜在化や、賠償を受ける人が少ないといった課題が確認できた」と説明。犯罪被害者支援を一層進めていくとしている。

 調査は、国の第4次犯罪被害者等基本計画に基づき、犯罪被害者らが置かれている状況を把握し、施策に生かすのが目的。昨年12月~今年1月、インターネットを通じて実施し、犯罪の被害者や遺族と答えた計819人と被害経験がないと答えた851人の回答内容をまとめた。過去にも5回、国の基本計画に合わせて同様の調査が行われている。

 今回のアンケートの被害類型は、DV、ストーカー行為等、児童虐待、痴漢や無理やりな性交などの性的な被害、交通事故、暴力被害で、損害賠償に関する観点から今回初めて、窃盗や詐欺といった「財産被害」も加えた。

 被害者798人と遺族21人の合わせて819人が被害に遭った時期は、70・6%が10年以上前、3~10年が17・5%、3年以内が12・0%。初めて被害に遭った際に相談した相手(複数回答)は、家族が33・7%、友人・知人20・0%、警察や地方自治体、支援団体などの専門機関が18・6%の一方、44・2%は誰にも相談しなかった。相談しなかった人の割合を被害類型別に見ると、児童虐待は84・4%にのぼり、性的被害51・3%、DV50・9%と高かった。専門機関に相談しやすくなる条件として、「周りに知られずに相談できる、プライバシーが守られる」を挙げる人が多い。

 各種の給付や支給、賠償を受けたかどうかでは79・9%が何も受けていないと答えた。加害者からの賠償を受けたのは3・1%に過ぎない。88・0%が加害者側との訴訟や交渉を行っていないといい、その理由として「どのような手続きをとればよいか分からない」(32・5%)、「加害者側とこれ以上関わりたくない」(27・6%)が目立った。

 各専門機関などによる支援や制度の利用状況では、何も利用していない人が74・8%を占めた。警察の16・6%が最多で、医療機関が3・3%と続き、ほかは2%台以下にとどまる。ただ、何かの支援や制度を利用した割合は、被害時期が新しい人ほど高くなっており、警察庁は支援は徐々に進んでいるとしている。(編集委員・吉田伸八

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