【アーカイブ】政治的に利用された国際司法裁判所 法とのバランスは
この記事は、2013年3月17日発行のGLOBE(グローブ)107号に掲載されたものです。
以下、当時の記事です
国際司法裁判所(ICJ)の裁判は国と国との間が原則だが、間接的に市民がかかわるケースがないわけではない。その先駆けが、核兵器使用の違法性をめぐる1996年の勧告的意見だった。
「核兵器は国際法に違反するのではないか」と問う動きは、80年代からあった。冷戦が終わり核軍縮の機運が高まる92年、平和組織のネットワーク「世界法廷運動」がつくられ、各国へのロビー活動に乗り出した。ノーベル平和賞受賞団体「核戦争防止国際医師会議(IPPNW)」や欧米の法律家らが中心だった。
この考えを支持する途上国などの後押しで、93年に世界保健機関(WHO)総会が、94年には国連総会が、ICJに勧告的意見を求める決議を採択した。
ふだんICJの審理がメディアの注目を浴びることは少ない。しかし、この時は違った。95年、広島、長崎両市長が法廷で被爆地の実態を証言した際には、各国メディアが集まった。これが、世界法廷運動の一つの狙いでもあった。話題となることで、国際世論を喚起する。ICJを政治的に利用する試みともいえる。
96年、ICJは勧告的意見…
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