第1回「志村さんに感染」デマと闘ったママ 止まらない攻撃…決意した一手

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高木智也

《「コロナ 志村けんさん死去」――。2020年3月末。未知のウイルスが社会に不安を広げ始めたころ、お笑いタレントの志村けんさん(当時70)の訃報(ふほう)が報じられた。ネットですぐに巻き起こったのは、感染させた「犯人捜し」だ。大阪・北新地の「クラブ藤崎」のママ、藤崎まり子さんは、その渦にのみ込まれた》

◆ふじさき・まりこ 大阪市出身。大阪・北新地のクラブでホステスやママを務め、17年5月に「クラブ藤崎」をオープンした。趣味は全国各地を食べ歩くことで、自身のSNSやグルメサイト「食べログ」でレビューをつづっている。

 お客様や従業員、その家族を感染から守るため、この年の3月下旬から、お店を自主休業にすることにしたんです。

 するとSNSには「クラブ藤崎 新型コロナ感染者で営業停止」という投稿が出回りました。

 投稿の中には、志村さんや当時阪神タイガースの藤浪晋太郎選手のコロナ感染と結びつけて、私が感染源と受け止められるものもありました。

 私はこれまで志村さんや藤浪さんにお会いしたこともないのにですよ。

 《「志村けんさんにコロナをうつしたのは、まり子ママ」。デマはものの数日のうちに拡散され、誹謗(ひぼう)中傷の書き込みもエスカレートしていった》

「明日も喋ろう 2024」

1987年5月3日、朝日新聞阪神支局に侵入した男が散弾銃を撃ち、記者2人が死傷しました。事件から37年。有形無形の暴力が個人の自由や尊厳を脅かす動きは後を絶ちません。屈することなく声を上げる人たちに話を聞きました。

 「死ね」「一人歩き、夜道に気をつけろ」。あの頃はスマホのバイブレーションが片時の休みもなく振動し続けていました。

 インスタグラムに、脅迫や何を根拠にしているのかわからないダイレクトメッセージが多いときで1日400~500件ほど届きました。

 デマを真実かのように伝えたネット記事もありました。

 正直、このまま身内や親戚に迷惑かけるんだったら、死んだ方がいいかなとも考えたんですよ。

 そんな時、昔から知り合いだ…

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    田中俊之
    (大妻女子大学准教授 男性学研究者)
    2024年5月4日10時34分 投稿
    【視点】

    ウワサの恐ろしいところは根拠がないのに拡散力が強いことです。ウワサを広める人々は軽い気持ちでしょうが、記事にある通りネットでの誹謗中傷をきっかけとした自死も起きています。クラブで働く女性への偏見、つまり職業及び性差別が今回の件に関わっている

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    磯野真穂
    (東京工業大学教授=応用人類学)
    2024年5月4日11時52分 投稿
    【視点】

    我慢してしまった方が、なかったことにしてしまったほうが楽なことはたくさんあります。 でも、誰かが告発に伴う労苦を引き受けて行動を起こさなければ、同じ思いをする人が未来に出続けることになる。 藤崎まり子さんの勇気と行動力に、心からの感謝と

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