絵と文字組み合わせた「葦手絵」、山口の篠塚智子さん世界へ発信

川本裕司
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 山口県岩国市由宇町生まれの篠塚智子さん(33)は、文字と絵画を組み合わせた「葦手絵(あしでえ)」を手がけ、昨年7月にはパリで作品が展示された。好きな絵画で生きたいと海外に飛び出し、夢を追ってきた。妥協を嫌い、独自の世界を形にしている。

 アーティスト名はTOMOKO.。2年ほど前から葦手絵師と名乗っている。

 絵の中に文字を組み込む葦手絵の存在を20代前半に美術本で知り、7年ほど前から手がけ始めた。独特の髪形が葦手絵に合う花魁(おいらん)をモチーフにすることが多い。昨年7月、パリで開かれた日本文化を紹介する「ジャパンエキスポ」に約20点を出展した。篠塚さんのSNSで作品を見たイベント運営団体から、出品を依頼された。

 「葦手絵を始めたのは、文字を加えることで興味を持ってもらう要素を増やし、色んな見方ができる作品にしたかったから」と話す。パリでの出展依頼を初めは詐欺かと思い、「きちんとした依頼と確認し、数日たって連絡しました」。ただ、ここまでの道のりは曲折に満ちていた。

 幼い頃から絵が好きだった。教科書の隅にパラパラ漫画を描いていた。テストの答案に向かうのは10分程度で、もっぱら裏に絵を描いた。「小学校1年のとき、黄色い花のスケッチを先生にほめられてうれしかったのが原体験です」

 高校を卒業すると、親に薦められて就職向けの資格を取れる岩国市内の短大に入った。しかし、絵の道に進みたい気持ちを抑えられず1年足らずで中退。海外留学を目指した。フランスが希望だったが、費用の安いイタリアで美術を3カ月間学んだ。

 日本に戻って広島市内の短大の美術科に進んだ。卒業後にイタリアへ再び渡り、絵画と語学を半年間勉強した。帰国後は岩国市内の家具店で働きながら絵を描き続けた。昨年から広島県大竹市に住み、制作に理解のある会社に勤めている。スケッチ用の鉛筆と絵を描くためのボールペンを握らない日はない。

 短大時代、「県の展覧会に出品するなら、審査員の先生が好きな雰囲気に合わせたら入賞できるよ」と教員に言われたことがある。「私には描きたいものがあります。審査員に合わせてまで賞をほしいと思わないので、展覧会に応募したことはありません」

 意志を貫きながら、地元で知り合った縁を生かし、山口銀行岩国支店で作品展を3年前から毎年開いたり、村重酒造(岩国市)の日本酒「金冠黒松」の迎春用ラベルを手がけたりと、活動の輪を広げてきた。

 パリの展示では「線がきれい」「見ていて気持ちいい」といった感想が寄せられた。「武士道」の漢字と日の丸、刀を持った花魁を組み入れた葦手絵は、説明しなくても理解された。

 「パリの体験で、日本の歴史や文化の深さを葦手絵で発信したい、と強く思いました。そのために日本の成り立ちなどについてもっと勉強していきたい」(川本裕司)

     ◇

 葦手絵は平安時代に生まれた技法といわれ、文字を巧みに絵画に採り入れている。和歌を風景とともに描いたり、経文の文字を配したりする作品がある。絵と組み合わせる文字は漢字、平仮名、アルファベットなど様々。

 ◆yabは24日午後5時33分からの「Jチャンやまぐち」で放送予定です。

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