匿名監督たちが語る香港民主化運動のリアル 映画「理大囲城」

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聞き手・佐藤美鈴
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 監督は複数で全員匿名、モザイク処理で出演者の表情は見えない――。映画の「常識」を覆すような異例のスタイルで香港の民主化運動のリアルを映し、昨秋の山形国際ドキュメンタリー映画祭で最高賞に選ばれた「理大囲城」が17日から公開される。

 2019年の香港民主化運動で警察に包囲され、香港理工大学に籠城(ろうじょう)したデモ隊の姿を内部から記録したドキュメンタリー。防護マスクに加え、モザイク処理で表情はほとんど見えないが、追い込まれていく若者たちの焦燥や恐怖、疲弊などが生々しく伝わってくる。制作したのは「香港ドキュメンタリー映画工作者」。リーダー不在の運動に共鳴するかのように、現場にいた監督たちがゆるやかにつながり、映画として完成させた。香港での公開は難しく、海外を中心に上映の輪が広がっている。顔も名前も性別も人数さえも明かさないという条件のもと、オンライン取材に応じた匿名の監督たちが語った香港のリアルとは。

 ――「香港ドキュメンタリー映画工作者」について、いつから、どのような集まりなのか、無理のない範囲で教えてください。

 このグループはそもそも集団でも組織でもなく、結構ゆるい集まりのような感じで、各自が現場で映像素材を記録していました。記録していく中で顔見知りになり、そこでちょっと話をして、お互いの持っている素材をデータベース化して誰かが映像制作する際に使えるようにしよう、と集まったのが始まりです。色んな監督が自分の意思に基づいて撮影していて、「ここに誰か行って撮って」などとお願いすることはありません。人数については時期によっても変わるのであまり言及していませんが、プロのドキュメンタリー制作者もいれば、逃亡犯条例改正の反対運動で初めて記録者としてカメラを回した人もいます。

リーダー不在・個人の決定を尊重

 ――「匿名」にした理由は。

 三つの理由があります。まず…

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