「猫の時代」が到来したわけ 人間の弱みに呼応、イヌ化の兆しも

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岡田玄 中島鉄郎 鵜飼啓
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 猫の時代だ。テレビもネット動画も、あっちでニャア、こっちでニャア。飼育数は犬を超え、モフモフ姿は心をとらえて放さない。私たちはなぜ猫にこんなにひかれるのか。

「わからなさ」という異次元への扉 鈴木晶さん(翻訳家

 1995年ごろでした。メス猫が、産んだばかりの子どもをたくさん引き連れて、家に毎日来るようになりました。飼うつもりはなかったので、家には入れませんでした。だけど、毎日毎日、網戸をひっかいて、気を引いて、なんとしても家に入ろうとする。

 あんまり来るものだから、外でミルクをあげました。ある日、そのメス猫が外で鳴き続けるので、観念して家に入れたんです。でも、朝起きると、またどこかへ行った。

 夏に来たから、その猫を「なっちゃん」と呼ぶようになりました。仕事から自宅前まで帰ってきて「なっちゃん」って呼ぶと、向こうから走ってくる。それで、うちの猫になっちゃった。

 「このやり口、どこかで読んだな」と思ったんです。米国の作家ポール・ギャリコの「猫語の教科書」でした。猫が書いたぐちゃぐちゃの原稿。解読すると、人間の籠絡(ろうらく)の仕方を猫が自分の子に伝える本だった、という話です。その中にある「人間の家をのっとる方法」、そのままの手口でした。この本は、亡妻が翻訳し、読まれ続けています。

 なっちゃんは2009年に亡くなりました。その後は猫を飼っていません。この20年で、猫の飼い方も変わってしまった。今は家の中で飼うけれど、それはかわいそうで。

 なっちゃんは好きな時に出て行って、夜中でも好きな時に帰っては、中に入れろとやる。猫は人間を従わせます。

 子どものころ、犬を飼っていましたが、犬は人間の命令に従います。人間は物や生き物に自分の妄想を投影するので、犬との関係にも、友情や心のふれあいを投影しがちです。犬は人間の顔色をうかがい、それに応えてくれる。

鈴木晶さんが語るネコの魅力に続き、ネコの認知を研究する高木佐保さんは「イヌ化」の兆しについて、ライターのアビゲイル・タッカーさんはネコが世界を「征服」した歴史について語ります。

 かたや猫は、人間に合わせる…

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