将棋・渡辺明棋王が10連覇を達成 挑戦者の永瀬拓矢王座を破る

村上耕司
[PR]

 将棋の第47期棋王戦五番勝負(共同通信社主催)の第4局は20日、栃木県日光市で指され、渡辺明棋王(37)=名人と合わせ二冠=が挑戦者の永瀬拓矢王座(29)に115手で勝ち、対戦成績3勝1敗でタイトルを防衛し、10連覇を達成した。棋王10連覇は、羽生善治九段(51)の12連覇に次ぐ記録。

 渡辺棋王は終局後、シリーズを「大変な将棋が多かった」と振り返った。10連覇達成については「(今後は)もうたぶんチャレンジすることはできないので、よかったと思います」と話した。

 将棋のタイトル戦の連覇記録は、羽生九段の王座19連覇が最多。次いで、故大山康晴十五世名人の名人13連覇がある。

 渡辺棋王は2月に王将のタイトルを藤井聡太竜王(19)=王位・叡王・王将・棋聖と合わせ五冠=に奪われたが、複数タイトルを堅持。タイトル獲得総数を30(歴代4位)に伸ばした。4月6日から、斎藤慎太郎八段(28)を挑戦者に迎えて第80期将棋名人戦七番勝負(朝日新聞社、毎日新聞社主催)を戦う。

 渡辺棋王は感想戦後、集まった各社記者の質問に答えた。一問一答は次の通り。

 ――10連覇を達成した今の気持ちを。

 「やっぱり10連覇、チャンスはもうたぶんないので、そういう意味で意識しているところだったので、それができたのがすごくよかったと思います」

 ――昨年王将戦で戦った永瀬王座と今シリーズ戦った印象を。

 「昨年に続いてだったので、それを踏襲してという感じでやってたんですけど、やはり序盤作戦も非常に幅が広いですし、考えさせられることが多かったですね」

 ――AIを使った研究が進んでいる。序盤作戦はどうだったか。

 「作戦は一局ごとに考えてはいくんですけど、棋王戦は結構、序盤だけで決まらない将棋が多いので、そっちの方に意識をおいてやろうと思っていました」

 ――全体を通しては。

 「先勝でスタートできたので、そのあとは一応、理想的な番勝負の運びをすることはできたかなと思います」

 ――今年度を振り返っては。

 「いろいろありましたけど、最後にこうして目標にしていた大きい結果を出すことができたので、またちょっと休んで、次の年度に向かっていければいいのかなというところです」

 ――新年度、名人戦の防衛戦に向けて抱負を。

 「年明けからタイトル戦を続けてきて、結構疲れたというところがあるので、新年度まであまり時間がないですけど、ちょっと一息入れて次に向かいたいかなというところはあります」

 ――新年度の目標はありますか。

 「まずは名人戦からですけれども、そのあとのことはあまり考えていない。名人戦をやって、その結果でその後の過ごし方やスケジュールも変わってくるので、まずはそこをやって、その後考えたいと思います」

 ――羽生さんの棋王戦12連覇については。

 「それはあまり考えていなかった。とりあえず大台に乗せたいなとは思っていた。タイトル戦の2桁連覇はそんなにやった人がいない記録なので、そこをすごく意識していた。その先のことは考えていなかったですね」

 ――3勝1敗の結果。勝因は。

 「番勝負全体の星運びでいうと、1局目で勝つことができたので、そのあとのプラン立てがしやすくなったというのはあった。1局ずつで言ったらいろいろありましたし、3局目はちょっとまずい負け方をしてしまったので、そこからうまく修正できたというところですね」

 ――先月、王将を失って、今回棋王を防衛できたことは。

 「ダブル防衛戦をやって、二つ負けるとしんどいので、今日防衛できてよかったですね。いろんな意味で」

 ――10年前、竜王戦で9連覇は失敗した。10年越しで10連覇ができたことについて。

 「五番勝負の短期決戦で毎年大変なところはすごくあった。この何年かは3勝1敗というスコアで勝てている。フルセットいくとプレッシャーもかかってきて平常心で指せないので、4局目でうまく取れているのが棋王戦に限ってはうまくいっているなという印象はあります」

 ――昨年、タイトルの通算獲得が歴代4位になったが、上3人にはまだ差があると言っていた。大山康晴十五世名人、中原誠十六世名人と羽生九段。中原十六世名人だけが達成されていない2桁連覇を達成されたことについては。

 「中原先生を上回る記録というのは持っていないので、通算タイトル数は全然抜くことはできないので、中原先生がやっていないという意味でも2桁連覇は価値が高いと思っていた。年齢的にも2桁連覇に挑むチャンスはもうないので、今シリーズ意識していたことなので、達成できてよかったなと思います」

 ――20代の9連覇の記録を30代で抜いたのは強くなったということか。

 「そんなに変わらないですけど、タイトル戦10連覇というのは、その間、いいときも悪いときもあるので、戦術の変化もあるので、そういういろんなものに対応してというところで難易度が高いと思うので、価値が高いのかなと思います」

 ――40代で目指している記録は。

 「達成できそうなものの中では棋王戦の10連覇というのは、近いところで意識していた。あとはタイトル戦に出ているうちは一つひとつという感じですね」

 ――棋王戦10連覇の率直な気持ちを。

 「やっぱり20代後半からだといろんな時期がある。いい時期もあれば悪い時期もあるので、そのいろんなことに対応できたというのが、それで同じタイトルを10期持たせてもらったというのはいちばん価値があると考えるところですね」村上耕司

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

【締め切り迫る】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら