「岐路にある」核不拡散条約 中満国連事務次長が日本に期待すること

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ニューヨーク=藤原学思
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 新型コロナウイルスの影響で延期が確実になった核不拡散条約(NPT)の再検討会議について、国連軍縮部門トップの中満泉・事務次長が29日午後(日本時間30日未明)、朝日新聞と毎日新聞の合同インタビューに応じた。

 中満氏はNPT体制が「岐路にある」とし、緊張関係が続く核保有国間、あるいは核保有国と非核保有国の間の溝を埋めるために、日本が果たすべき役割の大きさを指摘した。一問一答は次の通り。

なかみつ・いずみ

 1963年生まれ、早大法学部卒。米ジョージタウン大大学院(国際関係論)修了。1989年に国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)に入り、緒方貞子・難民高等弁務官の薫陶を受ける。一橋大学大学院教授などを経て、国連PKO局政策部長、国連開発計画(UNDP)危機対応局長などを歴任。2017年5月から現職。

――NPT再検討会議の延期が伝えられています。

 国連職員や各国代表部の外交官も含め、新型コロナウイルスの感染が相当数確認されている。その中で、安全の確保が当然、最優先事項になる。このまま感染拡大が止まらなければ、国連としてサポートすることは難しい。28日の非公式協議でそうしたところを各国に理解してもらい、当初の予定通りに1月4日に開幕するということはなくなった。様々な外交日程を考慮しつつ、ウィーンやジュネーブなどニューヨーク以外での開催も視野に入れながら、検討が続いている。

 個人的には、NPTの交渉をオンラインでやるのはかなり難しいと思う。時差の関係で、全員が参加できる時間帯を探すのも非常に困難だ。国連では多国間の会議において、平等性を重視する。「自分たちはアクセスが悪くて入れなかった、ほかの国に比べて難しかった」ということになると、本質的な議論に入る前に、会議が政治化されてしまう。

――すでに2年近く会議の開催が遅れています。

 たとえば、(この間の2021年2月に)米国とロシアの間で新戦略兵器削減条約(新START)が延長されたことは、大きなプラスだったと感じている。米国の政権が代わり、前政権と比べると核軍縮そのものの位置づけが変わったことがプラスに働いた。やはり、新STARTが切れてしまってNPT再検討会議を開催するというのはハードルが高かった。

 安全保障環境は刻一刻と変わっている。米国、ロシア、中国の超大国3カ国の緊張関係は非常に高まっている。今年の国連総会第1委員会(軍縮及び国際安全保障)では特に、米国と中国の間で言葉の応酬があった。二国間関係が悪くなっても、多国間協議の場でそうした議論を持ち込むというのは昨年はなかった。

――被爆者の方々が年を重ね、新型コロナウイルスの影響もあり、声を直接届けることが年々難しくなっています。

 本当に残念だ。交渉している…

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