学生時代からの悩み解消へ NBA4季目の渡辺雄太、新たな試み

松本麻美
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 「いつでも1年目の気持ち、崖っぷちの気持ちでやっていかないと、この世界では生き残っていけない」

 NBA4季目を迎える渡辺雄太(27)の言葉には、強い実感がこもる。

 昨夏は所属先がなかった。トライアウトを経てラプターズのキャンプに参加し、下部リーグに所属しながらNBAで一定の試合数プレーできる「ツーウェー契約」を結んだ。

 得意の守備と3点シュートで猛アピールし、ようやく自身初の本契約を勝ち取ったのは今年4月。結局、昨季は50試合に出場し、1試合平均4・4得点、3・2リバウンドを記録した。

 それを踏まえ、「今季は分析されてマークが厳しくなってくると思う。攻撃のバリエーション、シュート数も増やさないといけない」と課題を挙げる。

 変化をめざし、この夏から初の試みも採り入れた。

 「アスリートは体が資本。昔から口にするものには気をつけていたが、チームの米国寄りの食事が食べにくいと感じる時もあった」

 そこで、日本人の専属シェフを雇ったのだ。

 渡辺はもともとやせ形で、学生時代から筋肉が付きにくい体質に悩まされてきたが、シェフによる日本食中心の食事に切り替えてから2カ月ほどで、目標体重にあと1キロの97キロまで体が大きくなったという。「これまでは、体重が増えても体を重く感じてしまうことがあった。今回は体のキレも維持しながら増やせている」と手応えを語る。

合言葉は「今年が一番」

 今夏は東京五輪で日本代表の主将としても活躍し、閉幕後はすぐにチームに合流した。「本来オフシーズンの夏にプレッシャーのかかる試合をたくさん経験できたことは大きい。コンディションはこれまでで一番良い」

 渡辺によると、4月に結んだ本契約で保証されていたのは今キャンプへの参加などで、新シーズンでもチームの一員として戦い続けるには「登録選手の枠を勝ち取らないといけない」状態だった。

 今月4日にあった76ersとのオープン戦では、途中出場で10得点、7リバウンド、2アシストを記録。3点シュートに豪快なダンクシュート、守備でも2ブロックと存在感を示した。

 その後、左ふくらはぎの張りでオープン戦の欠場が続いていたが、ニック・ナース監督は「開幕戦には間に合うだろう。良いプレーをしていたし、私たちのシステムを昨季から知っている。彼のことは気に入っているんだ」と好感を口にしていた。ラプターズは18日に開幕メンバーを発表し、渡辺も名を連ねた。本契約を得た状態で迎える、初の開幕となる。

 10代で活躍する選手もいることを考慮すれば中堅と言える年齢になったが、「両親とは毎年『今年が一番大事』という話をしている。それを続けてきた結果『今』があるので、初心を忘れずにやっていきたい」。自らに言い聞かせるように語った。松本麻美

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