「期待したものは得られず」 五輪とコロナに揺れた織物

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緑川夏生 伊丹和弘
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 開催の賛否について意見が分かれ、観客の有無も直前まで定まらなかった東京五輪新型コロナ禍の影響で変わる状況に、一喜一憂、揺れ動いた自治体があった。新潟県小千谷市だ。

 市と小千谷織物同業協同組合が「東京オリンピックパラリンピック戦略会議」まで作って期待をかけたのが、「小千谷縮」の需要拡大だ。しかし、組合の高橋直久理事長は「正直、期待していたものは得られなかった」と振り返った。

 小千谷縮はユネスコ無形文化遺産にもなっている地元特産の麻織物。1970年代の最盛期は50以上のメーカーがあったが、洋服や安価な海外製衣料に押されて今は13社。経営者の高齢化も課題になっている。

 戦略会議は、東京五輪開催が決まった翌年2014年に活動を始めた。まず狙ったのは、開会式で日本選手団が着るユニホームへの採用だ。布面の「しぼ」という細かなシワが肌と布の間に空間を作ることで、通気性や速乾性に優れる素材は酷暑が予想される東京の夏対策にぴったりだと、五輪相や小池百合子東京都知事らを訪ねてPRした。

 しかし、制服はオーダーメイドなのに、出場選手は大会直前まで確定しない。小千谷縮のジャケット製作は約1カ月半かかるうえ、販売価格は5万円前後と高価だ。大会組織委員会には、ユニホーム採用ではなく全国の伝統工芸品で五輪公式商品をつくる事業への方針転換を勧められた。

挽回できそうなチャンス、巡ってきたけれど…

 それを受けて19年9月、大…

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