カチ、カチ、カチカチカチ……。拍子木を打つ音が響き渡った。群馬県伊勢崎市の伊勢崎神社で毎月1回、紙芝居師の石原之寿(いしはらのことぶき)さん(62)=茨城県土浦市=が昔懐かしい紙芝居を演じている。「コロナ禍に苦しむ地域の人たちを少しでも励ましたい」。振り返ると、自身も山あり谷ありの人生だったという。
伊勢崎市出身。大学卒業後は大手化粧品会社へ。営業畑を歩き、成績は全国でもトップクラスだった。
新潟県の支店に勤務していた43歳のとき、気分転換も兼ねて富山市で開かれた「全日本チンドンコンクール」を見に行った。カメラのシャッターを押しながら「こんなに楽しい仕事があるんだ」。チンドンの演技の仕方や流儀、作法を習いに大阪や東京に通った。
だが会社に戻れば、神経をす…