核ごみ文献調査、佐賀県玄海町長が受け入れ表明 原発立地自治体で初

渕沢貴子
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 原発から出る高レベル放射性廃棄物核のごみ)の最終処分場の選定をめぐり、佐賀県玄海町の脇山伸太郎町長は10日、選定プロセスの第1段階の「文献調査」について、国からの実施の申し入れを受諾すると表明した。文献調査は北海道の寿都(すっつ)町と神恵内(かもえない)村に次いで3例目となる。玄海町には九州電力玄海原発があり、原発の立地自治体では初めて。

 脇山町長はこの日午前、非公開で開かれた町議会全員協議会(全協)で文献調査を受諾する考えを伝えた。記者会見で「(町)議会などでの議論、国からの要請を熟考した結果、受け入れる決断に至った」と述べた。

 処分場の選定プロセスは3段階約20年に及び、文献調査はその入り口にあたる。市町村が応募するか、国からの申し入れを受諾することで実施が決まり、原子力発電環境整備機構(NUMO)が2年程度かけて地質などの資料を机上で調べる。文献調査を受け入れると、自治体の申請にもとづいて最大20億円の交付金が支給される。

 玄海町議会は4月26日、地元3団体から出された文献調査を求める請願を採択。5月1日には経済産業省幹部が町を訪れて調査を申し入れ、7日には斎藤健経産相が町長と会談して協力を求めた。

 脇山町長はこれまで、地理的な条件などから最終処分場に選ばれるのは困難として、「文献調査を受け入れる考えはない」と繰り返し表明してきた。だが、10日の会見では「住民代表が集う議会で請願が採択されたことは大変重い」と述べた。

 国は2002年に文献調査を実施する自治体の公募を始め、15年には国の方から申し入れる仕組みを導入。20年に寿都町と神恵内村が調査に応じた。だが、昨年、長崎県対馬市議会が文献調査を求める請願を採択したが、市長が拒否し、後が続かない状況だった。

 玄海町が文献調査を終えて2段階目の「概要調査」に進む場合、知事の同意も必要になる。佐賀県の山口祥義知事は「最終処分場も含め、新たな負担を受け入れる考えはない」としている。(渕沢貴子)

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