デジタル技術は血圧管理に有効か? 日本高血圧学会が指針を公表

鈴木彩子
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 血圧計スマートフォンのアプリ、ウェアラブルデバイスに、血圧を下げる効果はあるのか――。健康管理などのヘルスケア分野でデジタル技術の普及が進む中、日本高血圧学会は3月、「デジタル技術を活用した血圧管理に関する指針」を公表した。血圧計など6項目について、「成人の血圧を下げることに有効か」を、医学的な根拠(エビデンス)を精査して、推奨度をまとめた。

 調べたのは、①カフ(腕帯)を巻いて測る一般的な血圧計②腕時計や指輪のように身につけて活動量などを測るウェアラブルデバイス③尿や食事に含まれるナトリウム(塩分)濃度を測定する機器④スマホアプリをつかった血圧管理⑤対面とデジタル技術を併用した遠隔医療・保健指導⑥AI(人工知能)を使った診療支援・保健指導支援の6項目。2023年に1年ほどかけ、世界中の論文のべ約3万件を精査し、推奨の強さを5段階で評価した。

 その結果、推奨度が最も高い「行うことを強く推奨する」に該当したのは、①カフ式の血圧計のみだった。信頼性の高い研究65件について分析した結果、収縮期血圧が平均して3・27ミリHg低下していた。

 次いで、「行うことを提案する」に該当したのが、③塩分濃度の計測機器を使った管理と、⑤デジタル技術を併用した遠隔医療・保健指導。塩分濃度を測ると、血圧は平均して2・45ミリHg低下し、食塩の摂取量の低下にも役立っていた。対面の診察や保健指導に、テキストメッセージなどを組み合わせた場合も、平均3ミリHgほど血圧が下がった。

 ④スマホアプリをつかった血圧管理は、健常者は3カ月以内、高血圧の患者なら6カ月以内であれば、血圧を下げる効果が確認できた。

 一方、②ウェアラブルデバイスと⑥AIを使った管理については、「エビデンスは不十分なため、推奨・提案を保留する」とした。ウェアラブルデバイスについては、「血圧を測定できる」機器の研究は、調査時点で1件もなかったという。活動量計などでは、血圧を下げる効果は確認できなかった。AIは、血圧を下げる傾向が示されていて、今後の展開が期待される。

 指針作成委員長の有馬久富・福岡大学教授は「健康保険組合などで、健康づくりを進める際に、指針を参考にして欲しい」と話す。デジタル技術の開発企業に対しては、「よい製品ができたら、エビデンスを示す研究成果も出して欲しい」と求めた。

 指針は、同学会のHP(https://www.jpnsh.jp/digitalguide.html別ウインドウで開きます)で公開されている。

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この記事を書いた人
鈴木彩子
くらし報道部
専門・関心分野
医療・健康、脳とこころ、アレルギー
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    福原麻希
    (医療ジャーナリスト・介護福祉士)
    2025年4月16日16時42分 投稿
    【視点】

    今週、かかりつけ医に血圧降下薬を処方してもらうための診察を受けながら、血圧管理について話していたので、本記事に関心を持った。学会のホームページから要約版等もダウンロードして読んだ。私は複数回の取材を通して高血圧による脳卒中や心筋梗塞の発症の

    …続きを読む