朝日出版社「経営陣全員クビ」 M&Aでトラブル、労組はスト権確立

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藤田知也

 語学教材などで知られる中堅の朝日出版社(東京)の経営が、M&A(企業合併・買収)の手続きで混乱している。創業者の遺族が株式譲渡の契約を締結。全役員が解任され、経営体制が不安定な状態で業務を続けている。いったい何が起きているのか。

 朝日出版社は1962年設立。月刊『CNN ENGLISH EXPRESS』を発行し、哲学や科学から実用ものまで幅広い書籍を手がける。90年代には宮沢りえさんの写真集「Santa Fe」が大ヒットし、2009年出版の加藤陽子・東大教授「それでも、日本人は『戦争』を選んだ」でも話題を集めた。従業員はアルバイトを含めて約70人で、売り上げは十数億円。朝日新聞社や朝日新聞出版との資本関係はない。

 朝日出版社や創業家側への取材などによると、創業者の原雅久氏が昨年4月に87歳で死去。妻が7割、娘が3割の株式を受け継いだ。50代の娘は子会社の取締役を務め、昨秋から週1回ペースで出社していた。ただ、遺族は原氏と長く別居状態で、原氏のおいで2022年に社長に就いた小川洋一郎氏(52)ら経営側には不満を抱いていた。

現れたホワイトナイト

 経営陣が昨年、創業家から自社株買いを検討した際、10億円は必要だと見込まれた。同社が都内に自社ビルや遺族が住む戸建てなど複数の不動産を保有するためだ。

 今年5月、経営陣は遺族側の金融アドバイザー(FA)から、株式は都内の合同会社に売る方針だと告げられた。意向表明書に記された株式代金は4億6600万円だった。

 小川氏は娘との面談で「価格…

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この記事を書いた人
藤田知也
経済部
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経済、事件、調査報道など