国循理事長の論文に不適切の指摘、調査を開始 画像加工など

瀬川茂子 鈴木智之
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 国立循環器病研究センター国循大阪府吹田市)は19日、大津欣也理事長や、元研究所副所長が責任著者をつとめた複数の論文に、画像の不適切な使用が指摘されたため、第三者による調査委員会を立ち上げると発表した。

 論文の疑義などを指摘するウェブサイトで、大津理事長が2003~20年に発表した論文7本と、元副所長による複数の論文で画像の加工や使い回しなどが指摘されていた。大津理事長が国循在籍時の成果ではないが、8月にも予備調査に入る。その結果をふまえ、必要に応じて本調査に進むとしている。

 大津理事長は「一切の忖度(そんたく)のない公正中立な調査を行っていただきたいと思います。調査には全面的に協力する」と国循を通じてコメントした。

 国循ではこれまで、研究不正があいついで発覚してきた。

 21年には、大阪大と国循に所属していた医師が発表した論文5本に捏造(ねつぞう)・改ざんがあったと発表した。そのうちの1本は、心臓病の薬に肺がん転移を抑える効果があるかを調べる臨床研究で、安全性の根拠になっており、データに疑問が生じたことで、臨床研究が中止になった。

 今年3月には、岡山大の教授が国循に所属していた時の研究による論文で、113カ所の捏造があったと発表した。

 不正が発覚するたびに再発防止策を発表してきた。その対応を推進する立場の理事長の論文に疑惑が生じては、科学研究に対する信頼性がゆらぎかねない。当事者と利害関係のない第三者調査委員会ですみやかに調査を行う必要がある。瀬川茂子、鈴木智之)

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