第5回「助けて」が届かない 電車に飛び込もうとした私、救ってくれたのは
A-stories 追い詰められる女性たち
小さなおしりは、真っ赤になっていた。
おむつの在庫が気になり、1歳になる次男のおむつをこまめに替えられない。
哺乳瓶に入っているのは、しゃばしゃばのミルク。
ミルク代を節約するために、多すぎる水で薄めて、なんとかしのいでいた。そのせいか、次男はずっとおなかの調子も悪かった。
2021年の夏。市役所に向かう川沿いの道で、ベビーカーに乗った息子が、顔を真っ赤にして泣き始めた。おなかがすきすぎて。
西日本に住む40代の女性は、次男にこう言うしかなかった。
「もうちょっと、待ってね」
消えた夫、残されていたのは督促状だけ
その数カ月前の春。女性の夫が家を出て行った。2人の子どもを置いて。未払いの電気代やガス代の督促状だけが残されていた。
女性が働いていた会社は、コロナ禍の影響で倒産。ちょうど1歳になったばかりの次男は体調を崩しがちだったこともあり、定期的な通院が必要だった。新たな職も探せない。でも、2人は育てなければ。
「あ、これで最後」
ストックしていた次男の粉ミルクを開けたとき、将来の生活への不安で手が震えた。
先が見えなくても、目の前の…
- 【視点】
追い詰められる女性の命を守るために求められているのは、説教や評価ではありません。 「今から行くよ」「好きなもの選んで」「一緒にご飯食べよう」 そんな一言と行動です。 困ったら相談を、とコロナ禍以降、繰り返し呼びかけられています。この記
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