第5回「官の目利きは当たらない」 半導体政策 支える官僚はまるで素人

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大鹿靖明
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 財務省は当初、台湾のTSMCに巨額補助金を投じることに難色を示した。5千億円近い税金を投じたのに、半導体産業特有の好不況の波「シリコンサイクル」によって市況が下落した際、撤退されてはたまらない。最終的に最低10年の稼働継続や需給逼迫(ひっぱく)時に国内に優先供給するなど様々な条件をつけることで支出する運びになった。

【連載】TSMCショック

世界的な半導体メーカー台湾積体電路製造(TSMC)の工場誘致のため、日本政府は最大4760億円を補助することになりました。なぜそこまでするのか。官僚たちの証言を中心に舞台裏を描きます。

 自民党内で経済安全保障の議論が急速に高まったことも背景にある。「半導体をきちんと確保することが国内経済にとって必要。それに米中両国の状況が激変し、地政学的な点を考えなければなりませんでした」と主計局幹部は言う。

 巨額資金を投じるTSMCは、かつて日本の半導体メーカーが下請けに使っていた相手だった。日本メーカーは高付加価値のものは自社で生産するが、そうでないものは「ファウンドリー」と呼ばれたTSMCなど台湾メーカーに外注した。その地位が逆転し、いまや巨額補助金をつけないと誘致できない相手となった。

 経済産業省は2000年代初…

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この記事を書いた人
大鹿靖明
編集委員
専門・関心分野
経済、歴史、人間、ジャーナリズム、ロック