「家族もクズや」覚えのない強盗、罵倒する刑事 救ったオカンの眼力

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根岸拓朗

 音楽仲間の家に泊まった翌朝だった。携帯の着信音で目が覚めると、オカンと姉から20件以上も着信があった。

 「なに?」

 「今すぐ帰ってきて」

 オカンの声は何かにおびえていた。

 自宅に帰ると、2階から数人の男らが下りてきた。

 大阪府警の刑事だった。

「とりあえず上がれや」

 驚いて「何してんすか?」と聞いたが、「何してんちゃうやろ!」と返された。

 「泉大津署じゃ。とりあえず上がれや」

 俺の家やし、と思いながら部屋に入るとA4の紙を示された。強盗容疑の逮捕状だった。

 「やってませんよ!」

 2012年8月7日。この時、21歳だった土井佑輔さんは逮捕された。

 2カ月前の6月16日未明、自宅近くの大阪府泉大津市のコンビニで、店員がレジを開けた際に1万円を奪い取ったという容疑だった。

 警察署に向かう車に乗せられた。姉が叫んだ。「ちゃんと話したらわかってくれるから!」

全く身に覚えのない容疑での逮捕。この時点では、土井さんにはまだ余裕があったと言います。しかし、刑事の取り調べは苛烈(かれつ)を極めました。10年後の今年、明らかになった真相とは――。

 取調室で2人の刑事と向き合…

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この記事を書いた人
根岸拓朗
東京社会部
専門・関心分野
司法、人権、ジェンダー