陰謀論は防げるのか スポティファイ騒動、大事なのは「立ち止まり」
音楽配信サービス「Spotify(スポティファイ)」で、新型コロナウイルスの情報発信をめぐる騒動が起きました。物議の発端は、人気ポッドキャストを展開する米国のジョー・ローガン氏の番組。コロナに関する虚偽情報や陰謀論を広めているとして医師らのグループが抗議し、人気歌手ニール・ヤング氏やジョニ・ミッチェル氏らがスポティファイから自身の楽曲を引き揚げると宣言しました。ソーシャルメディア上ではときに、フェイクニュースが拡散します。虚偽情報を排除し、活発な言論空間をつくるために私たちは何をすべきなのか。メディアリテラシーが専門の坂本旬・法政大教授に聞きました。
――スポティファイの問題は防ぎようがなかったのでしょうか?
起こるべくして起こった、ソーシャルメディアのプラットフォーム上ではどこでも起こりえる問題です。ただ、過去にもフェイスブック(FB)、ツイッター、YouTubeで虚偽情報をめぐる問題があったのにもかかわらず、スポティファイで対応が取られていなかったことに驚きました。問題が起こってから検討するという発想では遅すぎます。
「表現の自由」守るには
――スポティファイは禁止すべきコンテンツの具体例を示し、違反した場合は削除する方針を新たに掲げましたが、「表現の自由」が脅かされる恐れはないでしょうか?
当然の対応とも言えますが、一方的な削除には表現の自由から懸念があります。ただ、大前提にあるのは人権です。表現の自由の尊重は重要ですが、人権侵害や人種差別に関する発信はそもそも許さないという姿勢も欠かせません。虚偽情報に対する対応として、ユネスコ(国連教育科学文化機関)は削除するのではなく、警告を発したり、警告ラベルを張ったりするよう指針を出しています。表現の自由を守りつつ、「危険なものは危険」と示すためです。
また、削除する場合でも、その判断の妥当性を担保する仕組みが必要です。私は以前、啓発目的のためにコロナの虚偽情報をFB上で共有していたのですが、警告なく削除されたことがあります。しかし、FBへの異議申し立ての結果、削除が取り消されました。削除の判断の透明性、審査のプロセスも大切です。
――プラットフォーマーが個別の異議申し立てに対応していくには、多大なコストがかかりそうですが。
当たり前のことです。そうしたコストをかけたくないのであればプラットフォーマーをする資格はないし、対策が取れないのであればビジネスとして成立してはいけないのです。
WHOが人類削減計画?
――虚偽情報とは別に、コロナ禍で飛び交う陰謀論についてはどう対応すればいいのでしょうか?
今回、問題になっているのは…
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