「間に合わないかも」丸1日かけ330キロ先へ、豪州沖で20人救助
オーストラリア沖でインドネシア漁船の乗組員20人を救助したとして、静岡県焼津市の船会社の漁船乗組員らに17日、海上保安庁長官から感謝状が贈られた。
5月14日朝、豪州西岸沖でマグロ漁をしていた第15福積丸に、海上保安庁から、近くで沈没しかけている漁船の救助を要請する連絡が入った。
同庁によると当時海上の風速は約20メートル、波の高さは約4メートルのしけ。同じく要請を受けた別の漁船は救助を断念した。だが漁労長の山崎清さん(58)は「この船が一番近い」と船会社と相談の上、漁を中断して救助に向かった。
福積丸が操業していた場所からインドネシア船まで約330キロだったが、波や風に押し戻され、なかなか到着できない。山崎さんは内心、「もう間に合わないかもしれない」と感じていたという。
丸1日かけて遭難海域に到着すると、漁船はほぼ沈没し、乗組員は海上に出ている船の先端につかまっていたり救命ボートで漂っていたりした。山崎さんらは1時間以上かけて、20人の乗組員を救助。言葉は分からなかったが、助けた乗組員が頭を何度も下げながら乗り移ってくる姿を目にしたという。
その後福積丸は到着したオーストラリア海軍に乗組員を引き渡して漁業に戻り、10月末に焼津に帰港した。乗組員を代表して感謝状を受け取った山崎さんは、「当たり前のことをしただけ」と話し、「あのしけの中、奮闘してくれた船員たちをたたえたい」と語った。(山崎琢也)…