第3回9・11から生還、運良かったわけじゃない 16年後のPTSD診断

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あれから20年 私はここにいる 米同時多発テロ

 2度目の飲酒運転で逮捕されたのは、あの日から16年後だった。心に長年抱えていた影の正体を知るのにも、同様の月日を要した。

 「PTSD」(心的外傷後ストレス障害)。米ジョージア州アトランタ郊外に住むケイラ・バージェロンさん(58)は2017年、そう診断された。それは、米同時多発テロに起因するものだった。

 「運が良かったね」。生きのびたことで、何度そう言われただろうか。でも、いまははっきりと違うと言える。「あの日、運が良かった人間なんて、ただの1人もいなかった」

「おい、命が危ない! 逃げろ!」

 01年9月11日は、ニューヨーク市長選の予備選の投票日だった。マンハッタンに住んでいたバージェロンさんは投票を済ませ、いつものようにスターバックスでベンティサイズ(590ミリリットル)のモカを買ってから、午前8時ごろ、世界貿易センター(WTC)ビルの北棟に入った。

 ニューヨーク・ニュージャージー港湾公社で、広報部長として働いていた。その日は自社のウェブサイトの更新のため、上司と打ち合わせをする予定だった。オフィスは68階。快晴で、窓から自由の女神がくっきりと見えた。

 午前8時46分、北棟が前後に揺れた。相次いでハイジャックされていた旅客機が、まず北棟に突っ込んだ時間だ。デスクとともに3メートルほど前方に押し出され、すぐにまた、元の位置に引き戻される。それまでも強風で揺れることはあったが、異常だった。

 最初の印象は「小さな飛行機…

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連載あれから20年 私はここにいる 米同時多発テロ(全4回)

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